道端に落ちた飴やお菓子にアリが群がっている様子を見たことがあるでしょう。
小さくかみ砕いたエサを、列になって巣に持ち帰る姿も印象的です。
しかしアリが持ち運べるものはそれだけではありません。一部の種では液体のエサも掴んで持ち帰ることができるのです。
そして今回、岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)の藤岡春菜氏ら研究チームは、沖縄産のトゲオオハリアリ(Diacamma cf. indicum)がエサの粘度で運搬方法を使い分けていることを発見しました。
研究の詳細は、2023年6月14日付の科学誌『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されました。
トゲオオハリアリは液体のエサを2種類の方法で運搬している
働きアリの仕事は、巣の仲間のためにエサを探し、それを持ち帰ることです。
中でも花蜜や甘露(アブラムシなどが分泌する糖の多いネバネバした液体)は、アリたちにとって重要な栄養源です。

しかし、そのような液体のエサを運ぶのは困難であり、生物学者たちはこれまでアリの液体の運搬方法に注目してきました。
アリたちは次の2種類のユニークな方法で、液体を運搬するようです。
1つ目は、「液体を胃の中に貯めて運ぶ」というもの。
これは多くのアリたちが採用している運搬方法であり、巣に戻ると胃の中の液体を吐き出して、他の働きアリや女王アリ、幼虫に受け渡します。

2つ目は、「液体を大顎で挟んで運ぶ」というもの。
これは一部のアリしか行わない方法であり、液体の表面張力を利用して極めて少量(トゲオオハリアリの場合は約0.001mL)の液体を持ち運びます。
そして沖縄産トゲオオハリアリ(Diacamma cf. indicum)は、アリの中でも珍しく両方の運搬方法を行うことができます。
しかし彼らが2種類の運搬方法をどのように使い分けているのかは、明らかになっていませんでした。
そこで藤岡氏ら研究チームは、トゲオオハリアリがエサの成分によって運搬方法をどのように変化させるのか観察することにしました。