報告書の発行直後にCEOとエンジニアリング部門のトップらを交えた会議が招集されたが、ロックリッジ氏はここでなぜ、エンジニアリング部門から船体全部にあるビューポート(覗き窓)の情報へのアクセスを拒否されたのか思い知らされる。4,000メートルまで潜航する計画であったにもかかわらず、製造メーカーが認証していたのは水深1,300メートルまでだった。オーシャンゲートは、4,000メートルの要件を満たすビューポートの製造費用をメーカーに支払うことを拒否していたという。

ロックリッジ氏は反訴状の中で「料金を支払う乗客は、実験的設計や船体の非破壊検査の欠如、潜水艇内に危険な可燃性物質が使用されていることを知らず、また知らされることもなかった」と指摘している。

同氏は繰り返して非破壊検査の実施を訴え、さらにアメリカ船級協会のような認証機関を利用し、業界の安全基準を満たしていることを確認するよう求めたが、オーシャンゲートはこの2つの要求を拒否。実験的設計を検査するために船級検査機関に費用を支払うのは不本意だと反論したという。

ニューヨークタイムズによると、ラッシュCEOは同年、海洋技術協会の有人潜水艇委員会の専門家38人から警告を受けていた。専門家らは書簡で、タイタンの乗船を販売するにあたり、DNVと呼ばれるリスク評価会社の評価を受ける計画がないにもかかわらず、同社の安全基準に合致またはそれ以上としており、「少なくとも誤解を与える」と指摘。DNVの監視下で、少なくとも試作機をテストするべきだと訴えたが、これを読んだラッシュ氏は、電話で、業界標準がイノベーションを阻害しているなどと反発したという。

同社は2019年のブログ投稿でも、タイタンは革新的であるから、通常の評価期間による認証を得るには数年かかる可能性があると主張。「革新的技術を実世界でテストする前に外部機関にスピードアップを求めるのは、迅速な革新の妨げになる」と述べていたという。