屋根がなく防音設備がない。空調設備もない

 収益性が高く、黒字化するのに手っ取り早いのは、コンサートや大規模イベントだ。しかし、国立競技場は屋根がないので近隣への騒音問題があり、空調設備がないために夏は暑く冬は寒い。とても通年でコンサートができるような施設ではないのだが、この点をJSCに問い合わせたところ、「開催実績がございます」との回答だった。昨年8月末には矢沢永吉のコンサートが2日間にわたって開催されており、そのことを指していると思われる。

「観客席から日除けがかなりせり出しているので、そこに開閉式のテント地屋根を付けることは可能だ。今は東京ドームで使われているものより進化したものがあって、透明のものもある。テニスコートぐらいだと、数分で開け閉めできる。おそらく国立競技場くらいの広さでも30分あれば閉められるのではないかと専門業者から聞いた」(小林氏)

スポーツへのビジョンも理解もない政府

 国からの10億円補填は今後議論を呼びそうだが、防音・空調設備を工事するにしても、多額の費用がかかる。小林氏は、スポーツ施設維持費の財源はスポーツ界が独自につくることを真剣に考えるべきだと提言する。

「スポーツ庁の予算は、東京オリンピック開催の年でも354億円。新しい国立競技場は建設前から赤字になることはわかっていた。日本でもスポーツベッティング(スポーツ対象の賭けビジネス)を認めてはどうか。国に予算がない以上、最も有効な施策。アメリカでは2018年に合法化され、市場が伸びている。試算によると、日本で野球やサッカーなど全部アメリカ方式でやると7兆円の売上になる。その一部、仮に25%を還元しても1兆7千億円前後がスポーツ界に入る」

 公募しても運営権獲得を名乗り出る企業が現れなければ、公費負担は膨らむばかりだが、現れたとしても、スポーツに対するビジョンがしっかりした企業でないと、国民からの理解は得られないだろう。国立競技場を「負のレガシー」にしないためにも、スポーツベッティングは検討に値する。

(文=横山渉/ジャーナリスト、協力=小林信也/作家・スポーツライター)

提供元・Business Journal

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