人間は自分の過去の選択を否定するのが苦手である。できる限り、誤りでないと思える理由を探そうとする。それが解決を遅くする。投資詐欺集団のうまいところは、そういう陥穽に落ち込むスピードを速くし、そこから抜け出すスピードを遅くする仕掛け作りに長けているということだ。被害者には実際上、やめておくという選択肢はあった。しかし、その選択肢を考えさせないところが詐欺のテクニックだ。なんだかカルト系に似ていると思うのは私だけだろうか。
そういった詐欺の背景には「簡単に儲けたい」という人々の下心がある。なければこういった集団はお手上げである。その下心を巧みに突いてくる。いわゆる「ロマンス詐欺」も似たようなものがある。ターゲットはお金儲けではなく恋心であるが。そして死や病気に対する極度の不安、あるいは職場や家族における人間関係の悩みという人々のマイナスの心理にもスッとこういった集団は入り込んでくる。
「詐欺まがい」のビジネスを展開する業者は少なくないだろうが、ただ法令上の問題にするためのハードルは必ずしも低くはない。
知恵の回る集団は、儲ける知恵だけではなく、逃げる知恵にも長けているからである。だから「〇〇詐欺」として、メディアを通じて私たちの前に現れるのはそのごく一部に止まる。仮に立件されたとしても、登録違反とか、手続違反といった小さなケースで終わることも少なくない。景品表示法などはもっと機能させる必要があるだろう。もちろん、自分の身は自分で守る、これが大原則だが。