蚊にモテてしまう原因物質を特定!
チームは、64人の被験者を、蚊にとって非常に魅力的な「高アトラクター」と、蚊があまり寄り付かない「低アトラクター」に分類し、何が彼らを区別しているのか調べることに。
化学分析の手法を用いて、被験者の皮膚上の分子化合物を調べた結果、高アトラクターの皮脂に多く含まれる50種類の化合物を特定しました。
そして明らかになったのは、高アトラクターは「カルボン酸」を多く分泌しているのに対し、低アトラクターはその分泌量が非常に低いことでした。
有機酸の一種であるカルボン酸は、人の全身に普通に存在し、皮膚バクテリアによって人間特有の体臭を作り出すために利用されています。
また、3年にわたる追跡調査の結果、被験者の分泌するカルボン酸の量は、時間経過や生活環境の変化によって変わらないことが判明しました。
調査期間の間に、各人の食生活や身だしなみは大きく変化していたにも関わらず、カルボン酸の分泌量は安定していたのです。
それを証明するように、追加実験でも、被験者33番がダントツで蚊にモテていたといいます。

しかし、ここで一つの疑問が残ります。
なぜ蚊は、カルボン酸の発する匂いに強く惹かれるのでしょうか?
研究チームのマリア・エレーナ・デ・オバルディア(Maria Elena De Obaldia)氏は「まだ証明されていませんし、推測の域は出ませんが、私たちはその答えを持っている」と話します。
氏の説明はこうです。
まずもってネッタイシマカは、人間を特に吸血するように進化してきました。
これはおそらく、人間の近くには必ず清潔な水があり、採餌(吸血)の後にすぐ繁殖場所へ移動できるからです。
それゆえ、ネッタイシマカは、人間の匂いとその他の動物の匂いを区別するため、カルボン酸を検出する方向へ進化したのでしょう。
実際、カルボン酸は、人間が大量に分泌する化合物であり、他の動物は出さないと言われています。
つまり、蚊がカルボン酸を好むようになったのは、人間の居場所を突き止めるための優れた目印になるからと考えられるのです。
しかし、これらを科学的に実証するのは、なぜカルボン酸の分泌量が多い人と少ない人がいるのかも含めて、今後の課題となります。
ただ、もしあなたが友人や家族よりも、やたら蚊に刺されるとしたら、それは血液型や食習慣のせいではなく、皮膚のカルボン酸が原因かもしれません。
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参考文献
Why some people are mosquito magnetsSome People Really Are Mosquito Magnets, and They’re Stuck That Way
元論文
Differential mosquito attraction to humans is associated with skin-derived carboxylic acid levels提供元・ナゾロジー
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