太陽系が銀河の中でも非常に物質密度の低い泡の中にあるという説は、50年ほど前から提唱されています。

その全容ははっきりとつかめていませんでしたが、今回、ハーバード・スミソニアン天体物理学センター (CfA)などの研究チームが、複数の観測データと理論を組み合わせ、太陽系を包む巨大な泡の3D時空アニメーションを作成しました。

それは泡がどのように形成され、太陽系がどのようにその泡の中に入ったかを示し、また泡が新しい星を生み出すために役立っているという銀河系進化史の再構築に役立つといいます。

研究の詳細は、2022年1月12日付で科学雑誌『Nature』に掲載されています。

目次
太陽系を包む局所泡の歴史

太陽系を包む局所泡の歴史

太陽系は周囲1000光年にほとんど「何もない泡」の中心にいる
(画像=銀河系の仲の太陽の位置 / Credit:Center for Astrophysics,A Bubbly Origin for Stars Around the Sun、『ナゾロジー』より 引用)

地球は現在、直径1000光年の幅を持つ、宇宙空間の空洞の中に位置しています。

宇宙は真空という認識の人も多いため、宇宙空間の空洞って何? と感じる人もいるかも知れません。

しかし実際には、銀河系内の宇宙空間は完全に何もない真空なわけでなく、地球大気と比べればはるかに希薄ですが、水素原子などの星間物質が漂っています。

地球は現在、そんな星間物質が非常に希薄な空洞の中にあるのです。

太陽系の周囲の星間物質の密度を調べると、1立法センチメートルあたり0.05原子だとされますが、銀河系の平均密度は1立法センチメートルあたり約0.5原子であり、泡の外と比べた場合、密度の差は10倍近くあります。

では、なぜ太陽系の周りは星間物質がそんなに希薄なのでしょうか?

ネイチャー誌に発表された今回の論文は、銀河系の進化史を再構築し、1400万年前に始まった一連の出来事が、近傍のすべての若い星の形成に関与する広大な泡を作り出したことを示しています。

可視化されたデータモデルでは、局所泡( local bubble)と呼ばれるこの巨大な泡が、1400万年前に約15個の星がわずか数百万年の間に連続して超新星爆発を起こしたことで、星間物質を押し出して形成されたことを説明しています。

太陽系は周囲1000光年にほとんど「何もない泡」の中心にいる
(画像=超新星爆発のイメージ / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

大昔とはいえ、1400万年前は地球の歴史から見ても比較的最近のことであるようにも感じます。

そんな激烈な現象が起きたとき、地球はなんの被害も受けなかったのでしょうか?

実は、この局所泡に地球がやってきたのは500万年前のことで、超新星爆発で泡が形成されたとき、地球はこの領域からはるか離れた位置にいたのです。

そのため、この連続した超新星爆発の影響も地球は受けていませんでした。

そして、500万年前に宇宙空間にできたこの空洞の中に太陽系が飛び込み、現在1000光年の幅を持つ泡のちょうど真ん中辺りに、太陽系があるというのです。

天文学者たちはこれが非常にラッキーなことだといいます。

それはどういうことなのでしょうか?