覚せい剤は魚もとりこにするようです。

7月6日、チェコ生命科学大学プラハの研究者たちにより『Journal of Experimental Biology』に掲載された論文によれば、自然の小川で測定された濃度と同レベルの覚せい剤(メタンフェタミン)を魚に与えたところ、中毒症状に似た状態に陥ったとのこと。

また断薬を行うと、離脱症状のような行動の変化をみせました。

覚せい剤のメタンフェタミンは、人間の脳内でドーパミンを増やして、覚せい感や快楽、多幸感を感じさせる効果があります。

いったいどうして人間用の覚せい剤が、魚の行動に影響を与えたのでしょうか?

世界中の川には「覚せい剤」が含まれている

覚せい剤は魚も「ヤク漬け」にすると明らかに
(画像=人間から排出された覚せい剤は魚を中毒にする / Credit:Canva . ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)

現在、違法な薬物乱用は人間社会に蔓延しています。

特に精神に重大な影響を及ぼすとされる、覚せい剤「メタンフェタミン」の生涯使用率はアメリカでは5%、イギリスでは10%にも及んでいるのです。

既存の研究の多くは、覚せい剤が人体に与える影響に焦点が置かれており、体から排出された覚せい剤の「その後」については詳しくわかっていませんでした。

血中に入り込んだ覚せい剤の大半は肝臓などで分解されて効力を失う一方で、分解しきれなかった残りは糞尿にに混じって排出されます。

しかし世界各国の浄水システムは基本的に、違法薬物を分解するために作られていません。

そのため、膨大な数の薬物乱用者から排出される多量の覚せい剤は浄水システムを突破して、河川に流入することになります。

結果、世界中の河川は1リットルあたり「数ナノグラム~数十マイクログラム」の範囲の濃度で覚せい剤を含むようになってしまいました。

そこで今回、チェコ生命科学大学プラハの研究者たちは、覚せい剤が川にすむ魚にどのように影響を与えるかを調べることにしたのです。