東京の老舗バーのカクテルレシピが一冊に。
創業から半世紀を迎える東京・湯島のバー「EST!」のマスター・渡辺昭男さんのカクテルを綴った書籍『EST! カクテルブック』がプレジデント社より発刊された。現在、酒のECショップ「BAR TIMES STORE」などで販売中だ。
往年のバーテンダーのカクテルへのアプローチを知れる一冊
1973年に創業し、創業50年を迎える東京・湯島の名バー「EST!」。
今年89歳を迎えるマスター・渡辺昭男さんは日本のバーの黎明期を支えてきたバーテンダーのひとりで、協会に属さず、真摯にカクテルを追求してきた。存在感あるカクテル、そしてゲストをもてなす姿勢においては同業者も憧れるバーテンダーである。
渡辺さんのカクテルは、材料も設備も限られていた時代のつくり方を踏襲しているものが多い。現在でも、「EST!」の氷式冷蔵庫で冷やされるのは、主にフルーツと一部のフレッシュジュースのみ。限られた材料で常温からつくるクラシックスタイルを守っている。
『EST! カクテルブック』には、渡辺さんの代表的カクテルやオリジナルカクテルのレシピを掲載。そこに込めた意図と物語をたどる。
レジェンドが“酒の世界”へ進むまでの道のりとは
これまで多くを語ることはなかった渡辺さん。渡辺さんがどのようにバーテンダーの道を歩み始めたのか気になる人もいるだろう。
渡辺さんは1934年に奉天(現在の中国・瀋陽)で生まれた。渡辺さんの父親は当時、満州鉄道の駅長を務めており、1945年の終戦により佐賀県唐津へと移住することに。そうして高校卒業後の1953年、渡辺さんは薬剤師を目指して上京を果たす。
バーと出会ったのもこの頃のことだ。渡辺さんは上京後、「トリスバー」でアルバイトを経験。これをきっかけに酒の世界へと飛び込むことになる。
その後、当時銀座にあったバー銀座「静」に移り、棚にぎっしりと並んだ洋酒に強い衝撃と憧れをい抱いた。そして1年ほど働いた後、湯島の「琥珀」へ。18年の研鑽を積み、晴れて1973年に「EST!」を開店する。
本書には、ゆかりの深い「木村硝子店」デザイナー・三枝静代さん、「目白田中屋」店主・栗林幸吉さん、「バー 街路」バーテンダー・成田美歌子さんが「EST!」を語るインタビューのほか、渡辺さんと二人の息子・憲賢さんと宗憲さんとの親子鼎談も収録されている。
往年のレシピを知り、自宅でより深くカクテルと親しんでみては。
EST! カクテルブック
定価:3,850円(税込)
体裁 : 232ページ/16.3×10.5×2.5cm
(IKKI)