日本では寒い時期に、ニホンザル同士がお互いに抱き合って体を温める「猿団子」が見られます。
同様に、世界でも霊長類が体を寄せ合っている光景がよく見られており、寒さと個体同士の結びつきには関連性があるように思えます。
そして最近、アメリカ、中国、イギリス、オーストラリアの研究者たちで構成される国際チームが、アジアに生息するコロブス亜科のサルの社会的行動と遺伝子を分析した結果、寒さがこれら霊長類の社会的絆を強くした可能性があると報告しました。
長年、地球上で生息してきたサルたちは、寒さに対処するために社会構造を変化させ、生存能力を高めてきたというのです。
研究の詳細は、2023年6月2日付の科学誌『Science』に掲載されました。
複雑な社会構造を形成してきたサルたち
霊長目オナガザル科のコロブス亜科(Colobinae)は、主にアジアに分布するサルです。
コロブス亜科の最古の化石記録は約1000万年前のものだと考えられており、彼らははるか昔から現代に至るまで、大陸を越えて分散し、様々な気候(熱帯、温帯、寒冷)で生きるようになりました。

そして今回、国際的な研究チームは、コロブス亜科が時間の経過と共に、どのように適応してきたか研究しました。
アメリカのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)の人類学名誉教授であるポール・A・ガーバー氏によると、「すべての霊長類は社会的な集団で生活しているが、その集団や結束力は異なる」ようです。
2~3匹単位で生活する集団もあれば、最大1000匹で生活する集団もあるのです。
ではコロブス亜科は、どのように社会的な構造を変化させてきたのでしょうか?
ガーバー氏によると、1頭のオスと2頭以上のメスからなる集団「ハーレム」が、アジアのコロブス亜科の社会的なベースだったようです。
オスは他のオスと敵対しており、自分の縄張りを守るために争いました。
しかし研究によると、時間が経つにつれて、より複雑な社会が形成され始めたようです。

例えば、コロブス亜科のある2つの属は、ハーレムを形成しているものの、縄張り意識がありません。
別々の群れの縄張りが重なり合うこともあり、一緒にエサを食べたり休んだりします。
特にシシバナザル(英訳:Snub-nosed monkey , Rhinopithecus属の総称)は、複数のハーレムが1年中一緒に生活しており、大規模かつ結束力のある繁殖集団を形成しています。
実際に研究チームが記録した集団には約400匹が所属しており、異なるハーレムに所属する個体間での繁殖も一般的(約50%の確率)でした。
同じコロブス亜科でも、社会構造には大きな違いがあるのです。
では、このような社会構造の違いを生み出す要因とはいったい何なのでしょうか?