ドイツのメディアではAfD躍進の背景を分析する記事が増えてきている。はっきりしている点は、移民問題がAfDの躍進を後押ししていることだ。2015年に100万人以上の移民が欧州に殺到した時、AfDは外国人排斥、難民拒否を叫んで有権者の心を勝ち取り、連邦議会入りを果たした経緯がある。今回はそれだけではない。ウクライナ戦争の勃発を受け、エネルギー価格の急騰、物価、住居費の高騰で国民の生活は厳しくなっている。ショルツ政権への批判の声は高まってきた。AfDはその抗議票を巧みに吸収しているのだ。

参考までに、AfDもFPOも反移民、外国人排斥傾向が強く、欧州連合(EU)のブリュッセルの路線には懐疑的だ。そのほか、ウクライナ戦争ではロシア寄りだ。

FPOの場合、政権入りのチャンスはかなり高い。ネハンマー首相(国民党党首)はここにきて移民問題で厳しい対策に乗り出してきた。FPOに流れる票を取り返す作戦だ。ただし選挙で過半数を獲得することは難しいから、どうしてもパートナーが必要だ。懸念材料は、FPOとの連立政権が国内外で強い批判を呼び起こすことだ。ただし、FPOは同国で既に2回、国民党との連立政に参加し、州レベルでは現在、3州で両党の連立政権が誕生しているので、ドイツのAfDとは違い、FPOとの連立アレルギーは少なくなっていることは事実だ。いずれにしても、AfDとFPOの両極右政党が次期選挙で政権入りを果たすか否かは、政権パートナー探しにかかっている。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年6月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。