個人差があるとは言え、男の子より女の子の方がおしゃべりであるというのが一般的な認識です。
しかし、生まれたばかりの年代では、この関係は逆転していることが明らかとなりました。
アメリカのメンフィス大学(University of Memphis)コミュニケーション科学障害学部に所属するD・キンブロー・オーラー氏ら研究チームは、生後1年は男の子の方が女の子よりも「よく話す」と報告したのです。
一部の乳児が生まれつき他の乳児よりも「おしゃべり」なのはよく知られていましたが、乳児が発する音の数には、性差も大きく関係していたようです。
研究の詳細は、2023年5月31日付の科学誌『iScience』に掲載されました。
生後1年の男の子は女の子よりも「よく話す」

乳児たちは生後3カ月ごろから、「あー」「うー」といった母音を発音し始め、生後1年になると、「パパ」「ママ」などの意味のある単語を話すまでになります。
一般的に、「女性は男性よりも言語能力が発達している(もしくは優位性がある)」と考えられているため、乳児が発する言葉に関しても性差を調べた場合、「女の子の方がよく話す」と考える人は少なくないでしょう。
しかし結果は真逆でした。
オーラー氏ら研究チームの当初の研究目的は、乳幼児の言語の起源を明らかにすることだったといいます。
ところがこの研究を進めていく過程で、研究者たちは「乳児期の男の子の方が女の子よりもよく話す」傾向に気づいたのです。
そこでチームは、この傾向をより大規模なサンプルで確認することにしました。それが今回の研究報告です。
この研究には5899人の乳児を1日中録音した合計45万時間以上のデータが用いられました。
この録音が分析にかけられ、生後2年間の赤ちゃんと成人の発話がカウントされたのです。
オーラー氏によると、「私たちが知る限り、これは言語発達に関してこれまで行われた研究の中で最大のサンプルです」とのこと。

そして分析の結果、生後1年間は、男の子が女の子に比べて約10%も多く発声していることが分かりました。
大規模なサンプルでも「乳児期では男の子のほうがよく話す」ことが確認されたのです。
しかし2年目にはこの傾向が逆転し、女の子の方が男の子よりも約7%多く発声していました。
ちなみに、乳児を世話する大人は、1年目も2年目も、男の子よりも女の子に対して多くの言葉を投げかけていました。
大人の発話の偏りに関わらず、赤ちゃんの発話は年齢によって性差があり、しかも途中から逆転していたのです。
では、どうしてこのような性差や変化が生じるのでしょうか?