私の周りに今「怪しい人」がいます。どうも記憶が飛んでしまい、言ったことをほとんど翌日、覚えていないのです。ただ、いくら私がその人と親しい関係だとしても「認知症の疑いがあるから専門家にみてもらったほうがいい」とは言えません。そう、憚れるのです。これは家族も同様でしょう。「うちのかぁちゃんが認知症のわけない、単なるもうろくだよ」と見ないふりをすることが多いかと思います。
では軽度の認知症はいつから始まるのか、と言えばアミロイドβというタンパク質が蓄積するのに20年ぐらいかかるとされるのです。つまり、70歳で明白になったとすれば50歳の時点から徐々に蓄積が始まっていたということになります。そんな人に「認知症対策を」といえば「お前、何言ってんの?」と怒りを買うのがオチでしょう。
もう一つはその検査が楽ではないのです。PETとか脳脊髄液(CSF)で調べるのが今の主流ですが、PETががんの診断などで重用されていることもあり、認知症の検査となれば検査機がこの日本ですら十分ではないと理解しています。
エーザイの今回の活躍ぶりは世界トップを走るという意味ですが、他の製薬会社もどんどんその研究を進めています。多分イーライリリーのクスリも比較的早い時期に承認されるでしょう。現在140程度の研究が進んでいるとされ、将来は明るいと信じています。
とはいえ、認知症になりにくいように自己管理する方法もしっかり生まれています。日本はその最先端を行っており、例えば脳トレは素晴らしいプログラムだと思います。医学的な確立がなされていないため、海外では脳トレと言う表現すら使えないのですが、高齢者対策先進国ニッポンが生み出した脳トレなどの認知症対策は誰でもいつでも取り組める最も手軽な「クスリ」だと言えそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年6月12日の記事より転載させていただきました。