リスクに対する態度

肌感覚でいうと、自営業者はリスク許容度が高く、サラリーマンはリスクを忌避する傾向があると感じる。もちろん、サラリーマンにも色んなタイプがいて同僚の中に「子供が生まれた後に長年勤めた仕事をやめ、ビジネススクールで難関資格を取ってすぐ転職。正直、無職で勉強に集中していた期間のプレッシャーは尋常じゃなかった」といったパワフルな人もいたが、これはほぼ例外で基本的に不確定要素を避ける人は多かったように思う。

一方自営業者の方が事業リスクの許容度は高いだろう。なぜなら今と同じことを続けていたら必ず売上が先細りしていく運命にあり、元々リスクを取らないと未来がないという立場にあるからだ。

今やっている仕事はある種、幻想みたいなもので状況が変われば消えることもあり得ると「覚悟」を持っている人は自営業者に多いと思っている。自分の知る酪農家は昨今の牛乳危機に大変な思いをしているが、インフレと円安前は極めて安定的に大きな収益を享受していた。

こうしたビジネス環境が急変するような事例を目の当たりにすると「目先のリスクを取らねば、未来でもっと大きなリスクに晒される」という感覚になるのだ。だから果敢に変化を受け入れ、挑戦しようという気概が生まれる。これが板につくと変化しない日々が続くことに対して、逆に大きな不安を覚えるようになる。

さらに自営業者はリスク許容度が比較的高い理由には「常に最悪を覚悟しているから」という事情もあるかもしれない。現在ビジネスが非常にうまくいってる社長と雑談をすると「まあ最悪、会社をたたむことになっても派遣かバイトして食いつなぐわ」みたいな冗談か覚悟か分からないことを言う人が結構いる。最悪を覚悟しているからこそ、多少のリスクを受け入れ攻めることができるというイメージだ。

細かいことを言えば他にも書ききれないほど違いはあるが、サラリーマンも自営業者も同じ人間である。だが置かれた立場が違うとまるで別人物のように振る舞いが変わってしまう。自分自身、サラリーマン時代の個人的な日記を読み返すと、今の自分は今とはまったく違う人格だったように思えて驚くことがある。人間、置かれた環境で全然違う人格になる生き物なのだ。

■最新刊絶賛発売中!

[黒坂 岳央]のスキマ時間・1万円で始められる リスクをとらない起業術 (大和出版)

■Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

■YouTube動画で英語学習ノウハウを配信中!