しかし、ロシアとの戦いが激しくなり、ウクライナ側からの強い要請を受けてドイツは徐々にだが、その政策を変更していった。軍事費の大幅な増額を皮切りに、最初はヘルメット、そして軽武器、そして重火器までウクライナに支援してきた。パトリオットとIRIS‐T防空システムに加えて、これまでに18両のレオパルト2A6主力戦車、40両のマーダー歩兵戦闘車、34両のゲパルド対空車両をウクライナに納入してきた。ショルツ首相は欧州の盟主ドイツの指導者としてウクライナ支援では最前線に立って奮闘したきた。ドイツ外交がウクライナ戦争で目覚めてきたわけだ。

ショルツ首相は外交面ではポイントを挙げたことに間違いがないが、外交でのポイントは長く続かないものだ。ウクライナ戦争が長期化する傾向が見られ出した頃から、対ウクライナ支援への国民の不満の声が聞かれだした。ウクライナ戦争の影響もあって、エネルギー価格、物価、住居代の高騰などで国民の日常生活は厳しくなってきたからだ。

ショルツ政権が脱原発を実施し、再生可能エネルギーへの転換などを実施してきた中、多くの国民は未来に対して不安、不確実性を一段と感じ出してきた。先の世論調査によると、国民の60%は未来に対して不安を感じている。特に、旧東独国民はより懸念を感じているという結果が出ている。

ショルツ首相はウクライナ支援問題でポイントを挙げる一方、国内問題で国民からの批判が高まってきている。そのトレンドは先の世論調査結果でも明らかに読み取れる。ショルツ首相のSPDと「緑の党」への国民の支持率が低下する中で、CDU/CSUが断トツでトップを走る一方、AfDの支持率が今年初め13%から、ここにきて17%と上昇している。ショルツ連立政権は3党の支持率を合わせても50%を大きく下回っていて、既に少数派政権に落ちてしまった。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年6月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。