企業年金資産の運用委託先の選定において、母体企業と親密な関係にある金融グループの投資運用業者が優先されることは、利益相反のおそれとして、好ましからざる事態であるが、日本の現状においては、是正されることなく、蔓延している。

法律上、企業年金には、忠実義務が課せられていて、利益相反は忠実義務違反になるはずであるが、監督官庁である厚生労働省は、忠実義務違反の解釈指針として、割高な報酬等による積極的な損害の存在をあげているので、利益相反のおそれが蔓延する状況が放置されているわけである。

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しかし、積極的な損害は証明され得ないとしても、消極的な逸失利益の存在は推定され得る。つまり、運用能力の評価だけで投資運用業者が選定されていたとしたら、より優れたものが採用され、より優れた成果を生んでいた可能性を排除できないのである。ところが、逸失利益があると推定はされても、その存在を損害として証明できるか、更には損害額の合理的推計ができるのかという具体的な検討に至ると、極めて困難というよりも、ほぼ不可能だろうということが直ちにわかる。