巧みだった新潟の修正
新潟の同点ゴールの場面では、右サイドバックの新井のポジショニングに改善が見られた。
前半29分に新井がハーフウェイライン付近まで上がり、タッチライン際から内側にポジションを移す。この位置で千葉からのパスを受け取ったことで、タッチライン際にいたMF三戸舜介(右サイドハーフ)と、センターサークル付近に立っていた高のどちらにもパスを出せる状態になった。
パスコースを限定しきれなかった湘南のプレッシングは後手に回り、その後の新潟のパスワークを止められず。伊藤からスルーパスが繰り出される際に、田上と谷口が湘南のDF石原広教(右ウイングバック)の両隣を突いたことも功を奏し、新潟がホームチームの守備を崩してみせた。新潟の修正力の高さに湘南が屈した場面と言えるだろう。
高評価に値しない湘南の守備
湘南の山口智監督は新潟戦後の会見で、自軍の守備について言及。狙い通りの守備ができていた時間帯があったことを明かしたうえで、反省点も挙げている。
「いいインテンシティの中、試合に入ってくれたと思います。実際に得点も取れましたし、前半に関しては相手の陣地でサッカーをするという目的の中で、十分にやってくれたところがあったんじゃないかと思います。ただ、失点シーンはいつも言ってるところのやられ方、準備不足、思い切りのなさのところでやられてしまったので、残念の一言に尽きます。最後セットプレーのところもそうですけど甘さが出ているので、もう一度失点のところは向き合いたい。最後まで攻める姿勢、勝ちに繋げたいというプレーは見られたと思いますし、この勝ち点1をポジティブなものに変えていきたい、そういうゲームになりました」
「(新潟が)ボールを持てるチームなので、そこへの守備を考えて、どう奪いにいくかというところは準備をしていました。前半はやってくれたのかなと。実際にチャンスもありましたし、立ち上がりPKを取ったシーンなどはそういう形が本当に出たシーンだったと思います。そこはひとつポジティブなところなのかなと思います。理想を言うとあれで前半を終えて、後半はコントロールしながらというのもありましたが、隙であったり逆転されるところ、しかもセットプレーというところの甘さ、ゲームプランには入ってなかったので難しさを感じました。ただ最後、選手の配置もそうですけど攻撃的にいって奪い切れたところは選手の勝ちたい、追いつきたいというところが出たと思いますし、ひとつそこにヒントがあるのかなとも思いました」(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。一部加筆・補正・省略)
山口監督は前半の出来に手応えを口にしたものの、守備面は高評価に値する水準だったとは言い難い。この試合で湘南の選手とコーチングスタッフは相手の修正を凌駕するための策を持ち合わせておらず、前述の通り新潟の同点ゴールの場面で新井の立ち位置の変化に対応できなかった。
時間の経過とともに間延びした守備隊形も修正できず、湘南の最前線と中盤、及び中盤と最終ラインの間でパスを捌いた伊藤、高、秋山(新潟MF陣)を誰が捕捉するのかも曖昧に。守備の緻密さに欠けた湘南が、勝利を逃した試合と言って差し支えないだろう。漫然としたプレッシングを改善できなければ、近年巻き込まれているJ1残留争いは今季も不可避だ。