「人間の食べ物を奪う鳥」といえば、日本では「トビ(もしくはトンビ)」が有名です。

同じようにイギリスの沿岸地域では、「カモメに食べ物を盗られる」ことが多いようです。

しかも、イギリスのサセックス大学(University of Sussex)生命科学部に所属するポール・グレアム氏ら研究チームによると、カモメたちは人間が持っている食べ物と同じものを盗む傾向があることも分かりました。

都市化したカモメたちは知的であり、急速に人間と都市環境に適応しているのです。

研究の詳細は、2023年5月24日付の科学誌『Biology Letters』に掲載されました。

人間の食べ物を狙うカモメたち

「トビ(またはトンビ)に食べ物を取られた」という声は、日本でよく聞きます。

トビたちは空から人間が手に持ったり、近くに置いていたりする食べ物を狙っており、急降下して音を立てる間もなく盗んでいくのです。

実際、動画共有サイトには、トビが食べ物を盗む瞬間を記録した動画がたくさんアップロードされています。

イギリスの沿岸地域では、同様の事件がカモメによって引き起こされています。

セグロカモメ(学名:Larus argentatus)は、20世紀半ばにヨーロッパの都市部を本拠地にしており、減少するカモメ全体の総個体数とは対照的に、急速に拡大・繁栄してきました。

彼らは自身の採餌行動を人間の活動パターンに適応させ、より効果的にエサが得ているのです。

これまでの研究により、セグロカモメが「人間が触れていない食べ物」よりも「人間が触れた食べ物」を好むことが分かっています。

今回、グレアム氏ら研究チームは、セグロカモメの採餌行動と認知能力をより深く知るため、イギリスの都市ブライトンの海岸線で、ある実験を行いました。

青色条件での実験の様子。
Credit:Paul Graham(University of Sussex)et al., Biology Letters(2023)

この実験で用意された「人間の食べ物(エサ)」は、色(青と緑)の異なる「ポテトチップスの袋」であり、人間(実験者)の近くに配置されました。

そして次の3つのケースで、カモメが接近したりエサをつついたりするか調べたのです。

  1. フリー条件:実験者は座ったまま何もしない
  2. 青色条件:実験者が青色の袋のポテトチップスを取り出して食べる
  3. 緑色条件:実験者が緑色の袋のポテトチップスを取り出して食べる