デジタル化の波の上に開花したAIです。新聞はネットに食われ、かつて800万部を維持していた朝日は、今やその半分です。ギネス級の1000万部を続けていた読売も600万部まで急激に部数を落しています。ネット、デジタル化の波に対応できないでいるためです。

新聞制作にも使えそうなのに、日本新聞協会は、現時点では著作権の侵害、偽情報の拡散への規制などの要求に重点を置いています。将棋の対局データはほとんど公開されるので、AIが活躍しやすい。新聞界は肝心の経営実態の情報が公開されていないため、経営刷新にAI技術も使いにくい。

藤井名人の天才ぶり、AI技術への関心が重なり、空前の将棋フィーバーが起きています。1局につき1人限定で250万円という「見届け人」というサービスに応募者は増え、8000円の大盤解説会も満席になる。主催者の利益にはつながらない。新聞の部数も増えない。

「藤井フィーバーをどう生かすか。将棋界の次の一手が注目される」(日経)。AIの波に乗った将棋界には次の一手があっても、アナログの新聞界の次の一手は相当に難しい。

将棋八冠のほとんど全部が全国紙、地方ブロック紙、通信社の主催です。囲碁の七冠も同じです。特別協賛の企業を招き入れ、資金を出してもらう流れがあっても、限りがある。毎日新聞主催の囲碁の本因坊戦の賞金は今春、2800万円から850万円に減額しました。よほど経営が苦しい。

将棋、囲碁はネットでフォローできます。解析もできます。自分の趣味の相手なってくれます。後期高齢者になり始めた団塊の世代が新聞も読まなくなったら、次の一手がなければ、紙の新聞の最終章になるでしょう。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年6月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。