それから24年、がんという病気に対する戦いと、似非権威と利権いう非人間的な世界との戦いを続けてきた。しかし、私も人間なので、孤独な戦いに疲れを覚えることもあった。そんな気持ちが切れそうになるたびに、机上の母の笑顔の写真が目に入るのだ。今年の3月には沖縄に引退する計画を立てていたが、国立研究開発法人の理事長という酷な仕事に夢は打ち砕かれた。

「お母ちゃん、もうこの辺りでええやろ」と大阪弁で写真に問いかけても、「最後まで、頑張らんとあかんやろ、あんたは」と優しく微笑み返してくる。

患者さんに希望を提供して、笑顔を取り戻すまで、許してくれそうにないだろう。

編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年6月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。