AI時代、通訳者は
―――AIを駆使した翻訳機能もどんどんアップデートしていくと見られますが、今後の通訳業界をどう見られていますか?
(翻訳機能は)自分にとっては良きライバルでもあり、仕事の能率を上げてくれる相棒でもあります。どんどん性能は良くなっていきま
すし、そうあってほしいと思います。その究極の姿として人間通訳が不要になる世の中になるのであれば、それは良いことだと思います。いまは「人間が通訳をすることの価値って何なのかな」とものすごく考えさせられていますね。
橋本さんが「抜群の安定感でスラスラとインクを繰り出し、私のパフォーマンスを支え続けてくれる」というPILOTのTIMELINE
―――先ほどおっしゃっていた人間性にも関係してくる話かと思いました。
そうですね、やはり人間対人間のコミュニケーションです。なので、そこにポッと機械が入って場が円滑になるのかという疑問もありますし。(AIが)そのうちできるようになるかもしれないですけど、人間って第6感とか働くじゃないですか。お客様が緊張されてうまく話せていない部分があったときに、「きっとこういうことがおっしゃりたいんだろうな」っていう行間を埋めるようなことができるのは、まだ人間だけなのかなと思います。
言葉が抜けても推測できるか、伝えるときに機械の声と人間の通訳はどちらの方が説得力を持つのかってところが問われていると思いますね。
20代前半を生きる若者へのメッセージ
―――U-NOTEは、20代前半を主な対象としているメディアです。その世代の人達にアドバイスがあればお聞かせください。
(私はかつて)まさか通訳者になると思っていませんでした。人に言われてなったようなものなので(過去記事参照)。なのに今、とてもやりがいを感じています。(皆さんには)“人生は計画通りにはいかない”ということを楽しめる心持ちでいてほしいです。
自分の才能や能力だって、全部把握できていないのが実情じゃないかなと思うんです。自分の良さを他人が気づかせてくれるようなこともよくありますよね。私もまさにそうです。
通訳者に向いているって言われて、そうなのかどうかもわからないのに飛び込んでみました。人生におけるアクシデントみたいなものも楽しむ感覚でキャリアを開発していけると広がりが出るのかなと思います。
ただ、そうは言っても進路は自分で決めなければいけないので、その
際にはプレッシャーや不安を感じると思うんですよね。そのとき私がいつもアドバイスしているのが、“夢中になれる方を選んだ方がいい”ってこと。「努力」は当然しますが、もっとパワフルなエンジンって「夢中」になることだと思うんです。
私のイメージだと努力という言葉は、時にはやりたくないことや辛いことに耐えながらやっていくという感覚ですが、夢中ほど無敵なものはないですからね。だから、迷ったときには自分の心が動く方を選ぶと良いかなと思います。「誰かに言われたから」とか「こっちの方が稼ぎが安定しているから」だけじゃなくて、「でもやってみたい」って思える方に突き進んでみるのも良いんじゃないでしょうか。(了)
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