議論されるべきは中抜きではなく雇用形態

 ネットなどではパソナGの中抜きが批判の的になることが多い印象だが、こうした指摘は実態に即したものなのか。

「よく『パソナは中抜きをたくさんしているから悪い』などといわれますが、そもそも中抜きは、取引の間に不必要に仲介者が入って手数料などを取ることを指します。ですが、パソナがやっているのは人材派遣業というれっきとしたビジネス。これを中抜きと断ずるのは少々乱暴に思えます。パソナに批判がよく集まるのは、パソナが東京五輪で運営スタッフを大量にあてがったように、同社がこれまで政府と連携してその勢いを拡大してきたことや、歯に衣を着せぬ物言いの竹中氏が悪目立ちしがちだからだと感じます」(同)

 2月には新型コロナのワクチン接種のコールセンター業務について過大に請求していた問題が報道された。これについて寺尾氏の意見を伺った。

「2020年にコロナ禍によるワクチン接種に伴う大規模な人員需要が出た際に、パソナGが大阪府枚方市をはじめとする3市から人員確保の依頼を請け負ったことがありました。パソナGはこの依頼をエテルという会社に再委託するかたちで対応したのですが、そのエテルが動員したオペレーターの数を過剰申告していたことが発覚し、10億円以上も不正に稼いでいたと問題になったのです。

 この問題でパソナGはかなりの批判を受けたわけですが、実際はパソナGもむしろ被害者側だと見ています。同社はエテル社に対してすぐに契約解消を突きつけたうえ、損害賠償請求を行っていますし、各市には過大請求になってしまった10億円を返還しています。エテルに再委託しなければ批判されることもなかったはずですが、これは推測するにコロナ禍という緊急事態でパソナ的にも手が回らなかったため、再委託せざるを得なかっただけに思えます」(同)

 だが、パソナGにも批判されるべき部分はあるという。

「中抜きうんぬんよりも、パソナが主に自社と契約をしている社員に有期雇用が多いという点、そしてそうした社員を人材派遣という形態で行っていることのほうが議論の余地があるでしょう。依頼する企業としては、研修や福利厚生を提供しなければならない正社員を雇うのではなく、コストのかからない派遣社員を労働力に当てられる。このように、企業にとっては正社員を雇わなくてよいという、都合がよい仕組みばかりが社会的に浸透してしまっているという点で、パソナ批判が起きるのは納得できます」(同)

 寺尾氏によると、同社は今後、年金だけでは食べていけない高齢者層を中心とした人材派遣業に力を入れていくという。同社がもたらす労働環境への影響の本質を注視していく必要があるのかもしれない。

(文=A4studio、協力=寺尾淳/フリーライター)

提供元・Business Journal

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