セルビア政府は4日、今後2年間、新しい銃の免許の発行を停止すると共に、今後3カ月間、内務省が銃器と弾薬が適切に保管されていることを確認するために、銃所有者の検査を強化することを決定した。また、内務省は国民に違法な武器を提出するよう求めた。公式情報によると、これまでに5万丁以上の武器が引き渡されたという。野党は、政権が管理する個々のメディアも社会での暴力の助長に大きく影響を与えていると主張している。
一方、ヴチッチ大統領は26日、野党側の抗議活動に対抗するために与党支持者を動員し、20万人以上の大集会を開催した。「希望のセルビア」をモットーに開催された同集会には、ハンガリーのペーター・シジャルト外相とスルプスカ・ボスニア共和国のミロラド・ドディク大統領らが演説に招かれた。
ヴチッチ大統領は、「2件の大量殺人事件の後、人々が怒り、恐怖を感じているのは当然だ。そして抗議活動で何かを変えたいと思っている人は子供たちがより安全になることを願っている。しかし、旧政権または野党の政治家は、直接関係のない議題まで拡大し、今回の出来事を自身の活動に利用している」と指摘し、2件の暴力事件を政治利用していると批判した(クリル電子版)。
それに対し、野党側は、「国民は子供たちや愛する人のことが心配でデモ集会に参加しているが、政府関係者は攻撃的なレトリックで火に油を注ぎ、抗議活動をますます大規模化させている。政府は市民の抗議活動を嘲笑しているため、政府代表者に対する怒りを更に増大させる結果となっている」と述べている。
なお、ヴチッチ大統領は27日、野党側の要請を拒否する一方、与党「セルビア進歩党」(SNS)の党首を辞任した。後任には、ヴチッチ氏の腹心、ヴチェヴィッチ国防相を選出している。同大統領は、「今後は大統領職に専念し、全国民のために努力していく」と表明している。なお、テレビ局ピンクは、残忍な暴力シーンで知られるリアリティ番組を中止するという。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年5月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。