当面の方向性としては、核によらない抑止力、すなわちミサイル防衛システムの技術向上や核シェルターの整備をはじめとする国民保護体制の構築などを強化することによって「核を使っても所期の成果は得られない」という拒否的抑止力を高めていくことでしょう。「それも更なる軍拡に繋がる」との批判もありますが、だからこそ「安全保障のジレンマ」と言われるのでしょうし、わが国として、あるいは国際的にも、一層の思考の深化が必要です。
ところで、「国際社会は一致して…」という文言が散見されますが、こういう場合の「国際社会」とは一体何を指しているのか。国連決議の場合は「国連加盟国」に近いのでしょうが、G7などの場合は「同盟国並びに同志国」、すなわち「アメリカと軍事同盟を結んでいる国々」ということなのでしょう。これを文字通り「世界中の国がみんな」という意味だと考えてしまうと、かえって物事の本質を見誤るように思われ、注意が必要です。
定数増となる東京での衆議院の候補者擁立を巡って、自民党と公明党の対立の尖鋭化が報じられています。自民党東京都連内には「公明党と一緒にやれば岩盤保守層が離れていく。公明党と決別することにより新たな支持層が期待できる」との強硬意見もあるのだそうで、私はその論には与しませんが、それならそれで一つの考え方かもしれません。
連立によって政権の安定を図ることはあくまで手段であって、権力の獲得や維持が自己目的なのではありません。安定した政権によって何を目指すのかが今一つ国民に見えにくくなっている現状に、少しでも変化が生まれるのであればむしろ望ましい面もあるのではないでしょうか。
政治は優れて妥協の営みであり、一致点を求める努力を怠ってはなりません。自民党には時に理念に走り、本当の弱い立場の人々に目が行き届かない面があることは事実であり、公明党がこれを是正してきた連立政権の妙味は大きいと思います。選挙で当選できるだけの得票を自分で開拓せねばならないのは当たり前で、その上で公明党の協力が得られるのは有り難いことであり、自分で努力を十分にしないままに、他党の票を当てにしてはなりません。
鳥取県の国政選挙においては衆参ともにその都度政策協議を行い、政策協定を文書にして取り交わしてきましたが、「何のために協力するのか」を明確にすることも重要なことだと思っています。
昨日の衆議院本会議で、本会議における投票の際「与党も野党も茶番」と記したプラカードを掲げたれいわ新選組の櫛淵万里議員を懲罰委員会へ付託する動議が可決されました。議会における秩序を乱し品位を傷つけたとのことで、該当しないわけでもなく、再度にわたる行為なので動議には賛成しましたが、かつて委員会においてこのような行為を行った政党や議員は多くいたように記憶します。同じ行為でも、集団でやれば許されて、個人でやれば許されないというのであれば均衡を失しているようにも思われます。
予算委員会での同議員の質問を聞いていて、その主張には全く賛同できないものが多くあり、政治的な立場は全く異に致しますが、「与党にも野党にも緊張感が足りない」とする本会議の弁明の中には、我々が反省せねばならない点も含まれていたように思います。
24日の読売新聞朝刊には、陸上自衛隊のヘリコプター事故について、ボイスレコーダー解析の結果、エンジンの出力低下が原因との見方を掲載しました。機微な情報がメディアに漏れること自体、極めて深刻かつ重大な問題です。情報の機微性と、ご遺族や整備担当者の気持ちに思いを致さずに話してしまう「関係者」の神経が私には理解出来ません。一方でこの件に関する防衛省からの正式な発表はまだなく、説明の際には報道の背景についても調査してほしいと思います。
来週は5月も最終週となります。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。
編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2023年5月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。