黒坂岳央です。

外務省の海外在留邦人数調査統計によると、2022年10月1日時点で海外永住者は過去最高の約55万人になった。その一方、日本への移住希望者は増加している。

Google検索データ(英語)は海外移住したい国で日本はカナダについで世界第2位であることを示し、米国、カナダにとっては日本が一位となっている。またこちらの記事(英語)ではシリコンバレーを避け、ジャパニーズドリームを追う外国人技術者を取り上げている。

海外移住する日本人は増加し、逆に日本移住を目指す外国人は増加している。なぜだろうか?

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海外移住する日本人の目的

昨今、日本の賃金安、円安が少々過剰と感じるほど報道されている。それを受けてSNSでも「海外移住する日本人が増加しているのは、出稼ぎ移住だからだ。日本は貧しく落ちぶれておりもはや後進国なのだ」とセンセーショナルに取り上げる人もいるが、実態はどうだろうか?

All about newsに掲載された調査結果によると、海外移住した理由1位は「学び(語学・留学)のため」となっている。次いで「家族やパートナーの転勤」、「結婚や出会い」と続き「経済的理由」はゼロであった。そして移住者からの回答で昨今の「海外は日本より稼げる報道」は「過剰報道だ」との回答も見られ、出費が大きく海外生活は楽ではないとのコメントも見られた。

上記の調査結果は永住ケースだけを取り扱っているものではないため、日本人が海外永住しているケースとの水平比較はできない。あいにく永住目的のデータは発見できなかったため、ここからは自己経験値の域を出ない推測も含まれるが「節税」もその1つにあると考えられる。

日本における所得税や仮想通貨利益に対する課税が海外と比べて高いのは間違いなく、節税目的での移住はあるだろう。知人にデジタルノマドや投資の重課税回避目的で海外に移住した人物はそれなりにいる(これは55万人の内訳の少数ではあると思うが)。また、大学教授やビジネス目的で移住する人も増えたと推測が可能だ。

法務省の調査によると日本に移住する在留外国人数は約296万人で、前年末に比べ約20万(7.3%)増加しており、シンプルにグローバル化やダイバーシティ推進で双方向で人の往来が増えただけに過ぎないという可能性を疑っても良さそうだ。少なくとも、日本から人材が一方的に大量に流出して国難の危機に陥っている、といった状況などではないだろう。このあたりはマスメディアやSNSの煽りとはかなり温度が違うと感じる。