シンクロメッシュのないシーケンシャルミッションのメリット
確実かつ迅速なシフトチェンジができる
皆さんも、レーシングカー車内に搭載されたオンボードカメラで、ドライバーがシフトチェンジをしている様子を一度は見たことがあるのではないでしょうか。F1の場合はパドルで、ラリーカーやドリフトマシンの場合は、シフトレバーを前後に動かしていると思います。
一般的なH形ゲートは、Hとは言うものの実際は「N」の文字をなぞるような動きになるのは周知の通りです。
おそらく多くの方で経験があると思いますが、山道でシフトチェンジの頻度が多い場合、5速から4速に入れたいのに2速に入れてしまった…などというミスシフトをしてしまうことがあります。コレは斜め方向にシフトレバーを動かすというH形ゲートの弱点なのです。また、レバーを動かす距離が大きいため、クイックなシフトチェンジも難しいという面もあります。
そこで、多くのレースカーに使われているのが「シーケンシャルミッション」です。現代では、ATやデュアルクラッチトランスミッション(DCT)でも、シーケンシャルトランスミッションと同様のシフトチェンジが可能なメカニズムが採用されています。ですがここでは、常時噛み合い式のシーケンシャルミッションについてお話しましょう。
常時噛み合い式のシーケンシャルミッションは、別名を「ドグミッション」とも言います。その理由については後述します。一般的なシーケンシャルミッションはI形になっており、前後にシフトレバーを動かすことで変速操作をします。
ただH形ゲートとは異なり、1速で引っ張っていきなり3速にチェンジする…というような操作はできません。かならず1速ずつシフトアップ・ダウンをしていきます。それゆえに、確実かつ迅速なシフトチェンジが可能なのです。
軽量かつミッションブローのリスクも低い
シーケンシャルミッションの強みはそれだけではありません。
前述したシンクロメッシュの常時噛み合い式トランスミッションは、変速時にスリーブを歯車に押しつけて摩擦を利用して合わせる上に、さらに歯車の溝が斜めになった「ヘリカルギア」を使っているため、レースカーのような強大なエンジン出力を許容するだけのキャパシティがありません。
しかしシーケンシャルミッションの場合、2つのパーツの隙間嵌め、いわゆるドグクラッチによって直接的にスリーブと歯車を合わせます。つまり、シンクロメッシュ機構がない分だけ軽量化ができるのです。
加えて、ドグクラッチかつ歯車にはストレートカットの平歯が使われているため、強力なエンジントルクもしっかりと受け止めることができ、ミッションブローの恐れが圧倒的に低くなっています。
シンクロメッシュがないために、変速時の衝撃や変速のための力、駆動音は大きくなりますが、クラッチを踏まないでシフトチェンジをすることが可能です。加えて、ある程度のメカニズムの知識を持っている人なら自分でメインテナンスすることができ、消耗したパーツを交換することも可能なのです。
ただし、こうしたマニュアルタイプのシーケンシャルミッションに交換する車両はレースカーなど稀な存在です。そのメリットを一般のドライバーでも味わえるようにしているのが、ATやDCTに付いているシーケンシャル機能というわけです。
この機能が付いた車両であれば、レーシングドライバーのようなシフトチェンジを楽しめ、その上オーバーレヴやミッションブローといったアクシデントに見舞われることもまずないのです。
文・山崎 友貴/提供元・MOBY
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