世界126か国以上のアート作品を取り扱うグローバルアートマーケットプレイス「TRiCERA ART」を運営するTRiCERA。
同社では初の海外作家個展として、香港出身の画家ノリス・イム(Norris Yim)氏による「Norris Yim – Beyond Names」を、5月27日(土)から6月4日(日)の期間、六本木・西麻布エリアのギャラリー「9s Gallery by TRiCERA」にて開催する。
抽象的な肖像画で知られる画家ノリス・イム氏
香港出身のノリス・イム氏は、現代人の匿名性を表現した抽象的な肖像画で有名な画家だ。同氏は、香港理工大学でデザインを学んだのち画家に転向し、洗練されたビジュアルで現代人のディストピアを表現し高い評価を得てきた。
今回開催する個展「Norris Yim – Beyond Names」では、一昨年から続くシリーズの「Nameless」の新展開が日本で初めて発表される。
香港で生まれ育ったノリス氏は、雨傘運動や香港国家安全維持法に抗するデモで激動する香港社会を目の当たりにした。
大きな転換と動乱を経験した香港で制作を続ける彼だからこそ、人間がその内側に秘めている本当の愛情や複雑な心の動きを、絵画という形に落とし込みたいという切実な創作欲が湧き続けるのかもしれない。
ビジュアルイメージが非常に洗練されているため、時に表面的な部分で評価されがちなノリス氏の作品だが、生身の感覚を大事にしながらも抽象度を保持しているというアンビバレントなバランス感覚こそ、同氏が注目されるべき特質だ。
偽善的な仮面を剥ぎとりその感情を表現する作品群
カラフル・モノクロなど様々な色彩を自在に駆使しながら、顔面があるはずの場所に暴力的に盛り上げられた絵の具は、まるでデジタル画像のノイズのようにも見える。
私たちは現在を生き残るために、偽善的な仮面を被ることが日常になっている。オリジナルの「顔」は隠されたまま、いつの間にか、顔を隠す道具だったはずの仮面が顔それ自体になってしまい、メイクアップと同様にオリジナルの自己を忘却させてしまう。
ノリス氏は、作品の中でその仮面を剥ぎとり、なまの絵の具で感情を表現する。哀れみや悲しみすら感じさせる「Nameless」シリーズは、現代社会の宿痾(しゅくあ)を暴露する作品としても注目される。
「Norris Yim – Beyond Names」でノリス氏の作品をじっくり鑑賞すると、真の顔を隠し、仮面を被った私たち自身が描かれていることに、衝撃を受けるに違いない。
Norris Yim – Beyond Names
会期:5月27日(土)~6月4日(日)
会場:9s Gallery by TRiCERA
所在地:東京都港区西麻布4-2-4 The Wall 3F
開催時間:12時〜18時 ※最終日12時〜17時
定休日:会期中無休
(高野晃彰)