人々の価値観や働き方が多様化し、従来の採用戦略では新卒で入社する社員を確保することが難しくなってる昨今。

SNSが普及し、どのような状況でも自分の欲しい情報が簡単に手に入る時代に育った「Z世代」を惹きつけるためには、どんなアプローチが必要なのでしょうか?

今回は、株式会社プレシャスパートナーズの常務取締役 COOである佐伯昌哉氏に、Z世代を取り込むために“共感”を起点とした新たなアプローチに取り組んでいる企業の事例とともに、これからの時代の新卒採用手法について解説していただきます。

「やりたい仕事」より「安定した企業」を選ぶ真意

『マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査』から、2020年以降に卒業した学生たちが就職活動の際に、「自分のやりたい仕事(職種)ができる」よりも「安定した企業」を選ぶ比率が多いことがわかりました。

SNSが普及し、様々な価値観に共感しながら育ってきたZ世代は、その一世代前の「ミレニアル世代」よりも“安定志向”のようです。

Z世代とは、1990年代中盤~2010年ごろまでに生まれた世代と言われています。2019年以降に新卒で入社した若者がZ世代にあたり、彼らはITバブル崩壊やリーマンショックの時期に子ども時代を過ごしてきました。

2020年以降に卒業した若者も含まれるので、就職活動の時期に新型コロナウイルスの影響を大きく受けていた世代と言えます。こうした要因から、将来の安定性を重視している傾向があると考えられます。

それでは、そんな彼ら・彼女らが考える企業の“安定性”とは、いったい何を指すものなのでしょうか。

結論から言えば、Z世代が考える安定性は、上場企業であるとかネームバリューがあるということではなく「福利厚生が充実している」「安心して働ける環境である」「売上高」といった具体的な項目です。

ネットリテラシーの高い世代ならではの情報収集能力を駆使して「自分が安心して働ける環境かどうか」「自分の価値観と照らし合わせたときの納得感があるか」などを考えて企業を選ぶ傾向があるようです。

Z世代が望む「心理的安全性」の具体例

Z世代の考える“安定性”は、企業の業績などの「外側」の部分だけではありません。働く環境や働き方、つまり数字だけでは見えない会社の「内側」への期待も大きいのです。

そこでキーワードとなるのが「心理的安全性」です。「心理的安全性」とは、集団の中で身体的にも精神的にも無理なく・ストレスがない状態を指します。

心理的安全性が高い環境については、具体的に下記のような例が挙げられます。

・従業員同士のコミュニケーションが円滑で、リスクを冒したり失敗したりしても非難されない雰囲気・文化がある。
・多様な生き方・価値観を認めている
・福利厚生(従業員への還元)が充実している

Z世代は「ウェルビーイング(心身が健康で、社会的にも満たされた状態)」を幸せなライフスタイル像として重要視する傾向が強くあります。

だからこそ心理的安全性が担保され、なおかつ納得して成長できる環境にいることで、ウェルビーイングが叶えられると考えている人が多いようです。