「これからが本番です」──今年2月に日本芸術院「建築・デザイン」分野の会員に選出された横尾忠則氏の言葉だ。

これまで横尾氏のグラフィックデザインの真髄を、ポスター、ブックデザイン、挿絵の3つのジャンルで展覧してきたggg(スリー・ジー)ことギンザ・グラフィック・ギャラリー。

4回目となる今回、「デザインのプロセス」という横尾作品の番外編に焦点を当てた「横尾忠則 銀座番外地」を6月30日(金)まで開催する。

Design Tadanori Yokoo and Daichi Aijima (Yokoo’s Circus)

Design Tadanori Yokoo and Daichi Aijima (Yokoo’s Circus)

創作のプロセスに焦点を当てた「横尾忠則 銀座番外地」

画家である横尾忠則氏が、日本芸術院で新設された「建築・デザイン」分野の会員に選ばれたことはある種の意外性をもって受け止められた。

今回の展示では、横尾氏が日本芸術院に選出された主な評価理由「文学、演劇、音楽、映画、ファッション等、様々な分野に活動の場を拡げた43年前のデザイン」(1960~80年代)に焦点を当てる。

ただしその対象は完成品のポスターや書籍ではなく、作品を構成するラフスケッチ、アイデアノート、デッサンや、表現エレメントとしてのドローイング、原画、コラージュ。

さらに版画やポスターを仕上げるための版下、色指定紙等々、作品完成以前の膨大な「デザイン表現のプロセス」だ。

Photography Mitsumasa Fujitsuka

Photography Mitsumasa Fujitsuka

これらの資料や作品は、横尾忠則現代美術館のもとですでに約80箱に収納・整理されていたが、事前に記録写真18,000点余をチェック。さらに展示のための250点を厳選するのに、企画者は約2,500枚の出力の山と対峙した。

うずたかく積み上げられたコピー紙の山は、すでに「ヨコオアート」の源泉で溢れかえり、「ヨコオアーカイブ」という名のカオス状態だったという。そのカオスを「丸呑み」することによって、今回の企画展の扉が開いた。

Photography Mitsumasa Fujitsuka

Photography Mitsumasa Fujitsuka

横尾氏と親交のあった高倉健氏の主演映画『網走番外地』になぞらえ、「横尾氏の仕事の番外の地」と呼べる展覧会。

息づかいまで感じられるスケッチや原画、版下等が並ぶ展示空間は、ブラックホールのように見る人を横尾氏の創造空間に引き込む。横尾氏の表現の原点・原郷に到達できる展覧会だ。

Photography Mitsumasa Fujitsuka

Photography Mitsumasa Fujitsuka