多くのネコはイヌと違って、飼い主に積極的にじゃれつくことをしません。

彼らが窓辺に佇んでジーッと外を眺める姿を見ていると「本当に家族を愛してくれているのか」と不安に感じることもあるでしょう。

しかしネコは飄々とした性格の持ち主ですが、ちゃんと飼い主を大切に思ってくれているのです。

それを如実に示すエピソードが2021年のオーストラリアで起きました。

アーサー(Arthur)と名付けられた雄ネコが自らの命を犠牲にして、飼い主の子供を毒ヘビの魔の手から救ったのです。

命を賭して子供を守ったネコ「アーサーの物語」

2021年2月、ブリティッシュショートヘアのアーサーは、オーストラリア東部クイーンズランド州ブリスベンにて、飼い主の家族と平穏に暮らしていました。

ところがある日、飼い主の幼い子供2人が自宅の裏庭で遊んでいたときのこと。

オーストラリアの固有種で、危険な毒ヘビとして知られるイースタンブラウンスネークが裏庭に侵入し、子供たちを襲おうとしたのです。

このヘビは世界第2位の強毒の持ち主とされており、以前から地元住民が襲われて死亡する事故が何度も発生していました。

同国のヘビ毒による死亡原因のトップが本種を含むブラウンスネーク属であり、噛まれたらまず助からないと言われています。

イースタンブラウンスネーク
Credit: en.wikipedia

その危険な存在に真っ先に気付いたのはアーサーでした。

アーサーは家の子供たちを守るために果敢に戦いを挑み、苦闘の末、なんとかヘビを裏庭から追い払いました。

ところが直後、アーサーは力なくその場に倒れ込んでしまいます。

ヘビは戦いに敗れたものの、アーサーに一太刀の毒牙を喰らわせていたのです。

裏庭の異変に気づいた飼い主がすぐにアーサーを自宅に入れて看病しました。

このときアーサーは一時的に病状が回復し、飼い主も一安心したといいます。(またこの時点では、飼い主もアーサーがヘビに噛まれたことは知らなかったという)

しかし翌朝、アーサーの容体が急変し再び倒れ込んでしまいます。

急いで動物救急センターのAnimal Emergency Serviceに搬送されましたが、治療の甲斐なく、アーサーは命を落としてしまったのです。

この話は同センターの獣医師が公式のFacebookでシェアしたことで、人々に大きな話題と感動を呼びました。


また獣医師によると、アーサーに見られた一時的な回復は、毒ヘビに噛まれた後によく見られる一般的な症状だといいます。

飼い主はこのことを知らず、回復後に病院に連れて行かなかったことを強く後悔しましたが、自分の子供たちの身代わりとなってくれたアーサーに深く感謝しています。

先のFacebookには「アーサーの家族は、当然のことながら打ちのめされていますが、今では彼を懐かしく思い出し、子供たちの命を救ってくれたことに感謝している」と書かれています。