目次
源流である多目的輸送車・ハンヴィー
【ハマーH1】軍用車ハンヴィーのDNAを受け継いだ最強SUV
【ハマーH2】H1の兄弟分として生まれた、実用性重視のSUV
【ハマーH3】三男はピックアップトラックベースのSUV

源流である多目的輸送車・ハンヴィー

シュワちゃんも大好き!“持て余す”からカッコいい、歴代ハマーの魅力とその源流ハンヴィー
(画像=『MOBY』より 引用)

©Rick Sargeant/stock.adobe.com

2006年に生産が中止されてからも、熱烈な支持を得続けている大型SUV、GM(AMゼネラル)「ハマーH1」。2020年には似て非なる電動車も発表されましたが、やはり人気が高いのはオリジナルのH1です。

H1を語る上で、欠かせない存在なのが軍用車「ハンヴィー(HMMWV)」です。H1はこのハンヴィーを基ににした民生モデルなのです。

ハンヴィーは1985年に米国各軍に配備が開始された汎用輸送車両。ベトナム戦争以降のアメリカ各軍は、AMゼネラルが開発した「M151」という小型ジープを使ってきました。

M151はジープの系譜では初めて、モノコックボディと前後サスペンションに独立懸架式を採用した車両でした。しかし、その構造ゆえに堅牢性が低く、路面接地性の悪さからスタックが多いなどの弱点が見られました。また小型ゆえに、輸送できる兵員や搭載兵器に限りがあったのです。

そこで米軍はこのM151の後継車となる車両の開発を進め、大型で高機動なハンヴィーが誕生しました。ハンヴィーの特徴はその多様性で、多彩なボディバリエーションが用意されており、搭載できる武器も様々です。また6.2LV8ディーゼルエンジンと四輪ダブルウイッシュボーンのサスペンションにより不整地でも高速移動を可能にしています。

ハンヴィーは装甲が薄いことから、重火器や地雷への対応が十分でなく、戦地で多くの被害を被りました。そのため米軍は次期車両への移行を検討し、2015年にオシュコシュ・コーポレーションの「L-ATV」が後継車として選ばれています。

【ハマーH1】軍用車ハンヴィーのDNAを受け継いだ最強SUV

シュワちゃんも大好き!“持て余す”からカッコいい、歴代ハマーの魅力とその源流ハンヴィー
(画像=『MOBY』より 引用)

©Stasiuk/stock.adobe.com

ハマーH1が誕生したのは1992年。一般的には、俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏がハンヴィーの自家用化を望んだから登場したと言われていますが、実際には多くのユーザーからの要望があったことから市販化に踏み切ったようです。ただ、シュワルツェネッガー氏が多数のハマーH1を所有しているのは事実で、すでにハマーEVも持っているほどのファンのようです。

一見すると、ハンヴィーと同じように見えるH1ですが、ボディの素材やドアなどの形状が軍用のそれとは異なっています。また内装もガラリと様変わりしており、メーターの配置、ダッシュボードの追加、豪華シートやエアコン・オーディオの装備などが民生モデル専用となっています。

エンジンは当初はハンヴィーと同じ6.2LV8ディーゼルエンジンが搭載されていましたが、94年モデルから6.5Lに排気量アップ。さらに96年にはターボ化されました。2006年からは、いすゞ製の6.6Lディーゼルエンジンに換装し、300馬力というスペックに向上しています。この他、5.7L V8ガソリンエンジンも用意されています。

パワートレーンはハンヴィーと同じフルタイム4WD式で、4H、4Lの切り替えをするサブトランスファーも備えています。また、前・中央・後のデフをロックすることで、より走破性を高めることが可能です。さらにタイヤの空気圧を車内から調整できるハブリダクションシステムを採用。路面の摩擦係数が低い砂地などでは、タイヤ空気圧を落とすことでトラクションを高めることが可能です。

通常の4WD車ですと、パワートレーン系が地面に向かって出っ張っているものですが、H1は車体下が真っ平らなのも特徴のひとつです。ハンヴィーの「路面障害物への干渉を防ぐ」という設計が受け継がれており、最低地上高はなんと406mm。そのため、コインパーキングの電磁センサーが反応しないというエピソードが生まれるほどでした。

この構造ゆえに、パワートレーンの大部分が車内に突き出しており、4席あるシートは大きなフロアトンネルで分断されているような配置になっています。

加えて、ダブルウッシュボーン式サスペンションのアームが非常に長く、ピボットがシャシー中央付近にまで伸びているのもハンヴィー譲り。この長いアームのサスペンションと極太線径のコイルスプリングのおかげで、悪路を高速で走っても非常にソフトな乗り心地を実現しています。

残念ながらGM製のハマーH1は2010年に生産を終了してしまいましたが、最近では米国ミルスペック・オートモーティブが新たなハマーH1を同じカタチで復活させています。

日本では持て余してしまうほどの大型SUVですが、その機能美と迫力から、大切に所有している人も多いようです。