2017年に登場したiDeCo(個人型確定拠出年金)。誕生から日が浅いこともあり、メディアで取り上げられることも多いiDeCoですが、その一方で大先輩の「国民年金基金」は完全に忘れ去られているように思います。
iDeCoは20歳から60歳以下の国民年金に加入する、すべての人が利用でき、税制の優遇も魅力ですよね。一方の国民年金基金は、第1号被保険者である自営業者やフリーランスの人に限定されます。そう考えると、iDeCoのほうが多くの人にとって身近に感じられるかもしれません。「自分は自営業者やフリーランスではないから国民年金基金は関係ない」と考える人もいることでしょう。
しかし、「一定の条件を満たせば」定年退職後の60歳以降でも国民年金基金を活用して「節税をしながら年金を増やせる」ことは意外と知られていません。それに「人生100歳時代」を考えると国民年金基金のほうがぐっと有利になるケースもあるのです。今回は「iDeCo VS 国民年金基金」と題してお届けしましょう。
何が違うの? iDeCoと国民年金基金
そもそも、iDeCoと国民年金基金の違いは何でしょうか。読者のみなさんは分かりますか?
最大の違いは「確定拠出」と「確定給付」です。iDeCoは自分で運用先を決め、その運用によって資金が増えたり減ったりします。年金額は最終的にいくらになるのか分かりません。増えるのも減るのも自己責任です。
一方、国民年金基金は、いくらで運用するかは決まっています。申し込んだときの予定利率で、ずっと最後まで続きます。つまり、申し込んだ時点で年金額が分かるのです。現在の予定利率は1.5%です。銀行の定期預金に比べると遥かに高いですね。
結局、iDeCoの運用が国民年金基金を上回るかどうかは最後まで分かりません。ただ、国民年金基金は予定利率なので、インフレで貨幣価値が下がるというリスクもあります。
税制優遇においては、iDeCoも国民年金基金もほぼ同じです。どちらも掛金の全額は所得税、住民税の控除になります。年金を受け取るときも公的年金控除の対象になります。
国民年金基金の「圧倒的なメリット」とは?
しかしながら、国民年金基金にはiDeCoにはない「圧倒的なメリット」があります。それは、給付を終身型か確定型か選べる点です。
終身型は「一生涯」年金を受け取ることができます。確定型は5年、10年、15年から選択するものです。
私がお勧めしたいのは、もちろん終身型です。ちなみに、国民年金や厚生年金も終身型で、生きている間ずっと年金を受け取ることができます。
つまり、国民年金基金は「長生きリスクに対応した資金」と言い換えることができるのです。毎月一定額の年金が入ってくるのは、老後の生活の安定もさることながら、何よりも安心につながりますものね。
ただ、終身型にもデメリットがあります。それは「長生きできなかった場合」です。長生きできないと、実際に受け取った金額が支払った金額より少なくなることもあります。そこをどう考えるかは人それぞれですよね。結局、何歳まで生きるかは誰にも分からないのですから。ちなみに、私自身は「長生きする」という前提で考えています。
「何歳以上」長生きすれば得なの?
具体的にiDeCoと国民年金基金を「数字」で比較してみましょう。
iDeCoで月額5万円(年間60万円)を3%、30年間運用した場合
60万円×30年=1800万円+1113万6844円=2913万6844円
国民年金基金は男性で30歳から60歳まで、B型1口、B型9口の合計月額5万1590円(年間61万9080円)を払い込んだ場合。 65歳から年間136万1976円を受け取れます。
上記のケースで国民年金基金を65歳から受け取ると「86歳まで」の21年間で2860万2000円となる計算です。(※年間で約136万2000円(65歳)×21年=2860万2000円(86歳))
つまり、上記の数字を比較した場合「87歳以上」生きることができれば、iDeCoよりも国民年金基金のほうがお得となります。タイトルの「人生100歳時代」を前提にすると国民年金基金が有利なのです。
ちなみに、厚生労働省によると2016年の日本人男性の平均寿命は80.98歳ですが、2065年には約85歳になるとの予測もあります 。もちろん、あくまで平均なので100歳まで生きる可能性もないとはいえません。
ちなみに、iDeCoにもほんの少しですが終身年金の商品があります。個人年金保険などがそれです。しかし、予定利率で考えると国民年金基金のほうが有利です。
「国民年金基金」は60歳以降も加入できる
もう一つ、国民年金基金が有利なのは「60歳以降も加入できる」ことです。iDeCoは、60歳以降は積立が終了してしまいますからね。
60歳以降に国民年金基金に加入する条件は「国民年金に任意加入していること」です。この条件を満たせば、60歳以降も節税をしながら年金を増やすことができるのです。
自分で運用するiDeCoは、基準価額が上がったり下がったりで一喜一憂することもあるでしょう。でも、国民年金基金は、運用が決まっているので一喜一憂することはありません。60歳以降も節税をしながら年金を増やすことができる国民年金基金、会社員のみなさんも「定年退職後」の運用先の一つとして検討してみるのもアリかもしれませんね。
文・長尾 義弘(NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP)/ZUU online
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