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ミイラが眠る博物館「イポリト・ウナヌエ」
幸せな死後の世界を信じて
ミイラが眠る博物館「イポリト・ウナヌエ」

スペイン統治時代の歴史的建造物を堪能したら、今度はアンデス文化に触れてみませんか?1824年にペルーの独立を決定的なものにした「アヤクチョの戦い」。Museo Histórico Regional "Hipólito Unanue(地方歴史博物館『イポリト・ウナヌエ』)は、この戦闘の150周年を記念し、1974年に建てられました。館内には5つの展示室があり、地元アヤクチョにおけるプレヒスパニック期のアンデスの発展について紹介しています。

ボリビア・ティティカカ湖畔に栄えたティワナク文化の影響を受けたと考えられている石像たち。

モチェやナスカ、チンチャ、チムー、チャンカイ、インカなどの他の時代の土器なども展示されています。

展示のメインは、なんといってもワリ文化。ワリはこのアヤクチョを中心に紀元600から1000年頃に栄えた文化で、あのインカにも多大な影響を与えたといわれています。
ワリ文化の発展には、ワルパと呼ばれる人々が大きくかかわっているそう。彼らは太平洋岸のナスカや、ボリビアのティワナクの人々と積極的な交流を図りました。それぞれの産物や原材料の交易だけでなく、芸術や信仰、工芸品の生産技術、社会組織の在り方、人と世界に対する概念なども取り交わされていたといいます。

右は男性器、左は頭上にネコ科動物の頭を乗せたどくろを模った土器。ワリの人々は生殖や死後の世界についても独自の世界を持っていたようです。

ナスカ文化の影響を受けたと思われるワリの土器。描かれた人物がすべて舌を出しているので、恐らく敵将の首級か生贄の首を表しているのではないでしょうか。彼らが被っている帽子や装飾、肌の色がそれぞれ違うことから、ワリの支配地域の広さを彷彿とさせます。
幸せな死後の世界を信じて

アンデス文明全体に共通する習慣のひとつである、人工的な頭蓋変形が施された頭蓋骨。まだ骨が柔らかい乳児期から頭部を板で挟んだり紐で縛ったりするため、頭部への痛みに加え、脳圧の上昇や血液循環に伴う障害を引き起こしたと考えられています。

ワリ時代のミイラ。ワリの人々は死後の世界を信じていたのだそう。ミイラ包みのそばからは、たくさんの埋葬品が見つかっています。

嬰児と子供のミイラもありました。

この赤ちゃんミイラは、まるで今にも起き出してきそう!この子の頭にも人工頭蓋変形の跡がありますね。現代の我々からみるとただ「なんとも酷なことを」と思ってしまいますが、ワリの人々にとってこの習慣は当然、いや、生まれたらすぐ処置しなければならないほど重要なものだったのでしょう。
地方博物館ながら見応え十分なイポリト・ウナヌエ博物館。ワリ文化の魅力を余すところなく伝えてくれる地方博物館です。
地方歴史博物館「イポリト・ウナヌエ」(Museo Histórico Regional "Hipólito Unanue")
- 住所:Independencia 502, Ayacucho
- 開館時間:9:00~17:00
文・写真・原田慶子/提供元・たびこふれ
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