5月13日(土)~29日(月)の期間、画家・菊地匠(きくち たくみ)氏の個展「左手の庭」が、京都市のMON Gallery and Wine Bar(モン ギャラリー アンド ワインバー)にて開催される。
『美術手帖』やアートの専門YouTube チャンネル「MEET YOUR ART(ミート ユア アート)」などにも取り上げられている菊地氏。その個展について紹介する。
様々なメディアが取り上げる注目画家
菊地氏は1991年栃木県足利市生まれ。
2015年に東京芸術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業、2017年に同大学大学院美術研究科芸術学専攻修了。
菊地氏は、コットンでできた水彩紙と鉱物を砕いて作られた岩絵具を制作に用いている。技法としては一度つけた絵の具を拭うことを特徴とするが、それによって拙速に結論を出すことへの留保や躊躇いの感覚をもたらそうとしている。
そのような感覚は主に、進歩や発展という流れの中に埋もれてしまった存在に目を向け続けたドイツの哲学者ヴァルター・ベンヤミン氏の思想に影響を受けたものである。
関西地域での初めての個展
東京藝術大学大学院を修了後、毎年個展を開いている菊地氏にとって同展は、関西地域での初めての個展。また、その内容は新旧合わせた絵画・詩・オブジェの約20点の作品で構成されている。
フラ・アンジェリコの作品からの強い影響
同氏は、ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミン氏やフランスの画家アンリ・マティス氏などに大きく影響を受け、経験した出来事との距離を測りながら制作活動を行ってきた。同展ではそのアプローチを変えることなく、15世紀イタリアで活躍した画家フラ・アンジェリコ氏の作品から強く影響を受けた作品を発表する。
タイトルはディディ=ユベルマン氏の論考に由来
同展タイトルの「左手の庭」は、ディディ=ユベルマン氏の論考に由来。著書『フラ・アンジェリコ 神秘神学と絵画表現』によれば、アンジェリコの作品には左側に庭が描かれることが多く、その庭には失われた楽園のイメージが重ねられているという。同氏はアンジェリコが近づいた「庭=楽園」と自身の間に「超えられない距離」を感じつつ、創作を通じて、自らの現在地と「庭」との距離を測る。
その手段は、一度付けた絵の具を刷毛で「拭う」こと。「楽園」へと近づくことに躊躇いを覚えながらも、「拭う」ことで、いまや掠れてしまったそのイメージを表出させようとしている。
菊地匠氏の関西地域での初めての個展を観に京都まで訪れてみては。
菊地匠「左手の庭」
開催日時:5月13日(土)~29日(月)14:00~20:00※火・水曜は休業
作家在廊日:5月13日(土)・14日(日)・15日(月)・28日(日)・29日(月)
会場:MON Gallery and Wine Bar
所在地:京都府京都市中京区上一文字町285
(角谷良平)