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モーゼルワインの交易都市トラーベン=トラーバッハ
地下に眠るワインセラーを訪問
モーゼルワインの交易都市トラーベン=トラーバッハ
トラーベン=トラーバッハはモーゼル川中流に位置する、人口6,000人ほどの小さい町です。18世紀終わり、この街からイギリス、ロシアをはじめとする全世界へとモーゼルワインが出荷され、フランス・ボルドーに続く世界第2位のワイン交易都市でした。
この繁栄は、特にイギリスによるリーズリングワインの大きな需要が原因でした。当時100以上のワインセラーや貿易会社が存在し、現在もその跡地を訪れることができます。モーゼル川を隔てて、左岸がトラーベン地区、右岸がトラーバッハ地区と分かれています。
日本からのアクセスとしては、トラーベン=トラーバッハの街から約150キロ先に位置するフランクフルト国際空港を経由するのが良いでしょう。東京からはルフトハンザ航空やJAL、ANAなどがほぼ毎日直行便を運航しています。
上流40kmの位置には、ローマ時代の遺跡で有名なトリアーがあります。トリアーへはバスで約3時間、もしくは電車でも行くことが可能です。隣国ルクセンブルクへも車で2時間ほどで到着するので、合わせて旅程を組んでも良いでしょう。
地下に眠るワインセラーを訪問
ワイン交易の全盛期には、ワインセラーが地下にまで拡大され、中には地下数階、数百メートルに渡るものも。かつてのワインセラーの中には、現在もワインの貯蔵を続けているものもあります。トラーベン=トラーバッハの観光局が主催するガイドツアーに参加すると、これらの地下ワインセラーを訪れ、ワインのテイスティングをすることが可能です。
ツアーは1人12ユーロで、ワイン一杯の試飲が付きます。残念ながら、通常ツアーはドイツ語での開催しかありませんが、プライベートツアー(最大25人まで。1グループ100ユーロ)を予約すると、英語もしくはオランダ語での案内をつけることが可能です。
これらのセラーはガイドツアーを除くと、ワインフェスティバルやコンサート、クリスマスマーケットでしか訪れることができないため、とても貴重な体験になります。
今回、観光局主催のツアーで回ったセラーは、以下の4つです。
Franz Wilhelm Langguth's Mosel Cellar and Deep Cellarは、1950~1960年代に建設された47のコンクリート製タンクからなるセラーです。

1つのタンクに2万リットルのワインが貯められ、総貯蔵可能容量は250~300万リットルとも言われています。ここにある最大のタンクは10万リットル以上の容量を持つと同時に、1896年に建設されたモーゼルで最も古い歴史を持つタンクです。当時の革新的な技術とモーゼルワインへの高い需要が垣間見えます。残念ながら、モーゼル川氾濫による浸水が続き、20世紀に入る頃には、セラーは移転を余儀なくされました。

2軒目のKrempel Wholesale Beveragesは、14世紀半ばに作られたとされている、建築的に最も印象的な貯蔵庫の一つです。

粘土で作られた柱は鉄で補強され、床には側溝も付いています。かつての木樽がまだ残されており、併設されたバーの賑わいが今にも感じられそうでした。ここから出荷されたワインはライン川を昇り、フランクフルトの見本市に出荷されたそう。
次に訪れたCaspari/Eggert Wineryでは、約30メートルの通路の両側に、40トン分の樽が並びます。このセラーはプロテスタント教会につながるように拡張工事が始められたものの、工事による振動で教会の鐘が鳴り始めたため、中止となったそう。
そして、最後にCarl Emert Winery。ここは現在も商業利用されている数少ないセラーの一つです。第二次大戦時には防空壕としても利用されていたセラーで、今も湧き水が湧き続け、湿潤な環境が保たれています。
