マネーIQゼロの筆者が、自腹で投資体験する本連載。今回は新しくなるというNISA制度について、本連載監修のファイナンシャルプランナー・高山一惠さんに解説してもらおう。
「政府は『資産所得倍増プラン』を打ち出しており、国民の投資をさらに活性化させるために、現行のNISAでの新規買付を2023年で終了させ、2024年からは制度的に改善された別のNISAを新設することになっています」(高山一惠さん)
どのような変化が起きるのか。新旧の比較表は以下のとおりだ。
「現行のNISAは『つみたてNISA』か『一般NISA』を選ばなくてはいけないのに対し、新NISAは『つみたて投資枠』と『成長投資枠』の両方をできるようになります。そして、制度に終了がなく恒久化されるのもポイントです。さらに、表で比較すればわかりますが、非課税期間は無期限で投資上限もそれぞれ大幅に増えています」(以下同)
これまでは、つみたてNISAなら月3万3000円の積立が上限だったが、新NISAの積立投資枠は10万円になる。筆者は上限額を積み立てることは経済的に難しいが、家計的に余裕のある人にとっては朗報だ。
ちなみに、つみたて投資枠で購入できる商品は、つみたてNISAのラインナップとほぼ変わらないようなので、感覚的にはこれまでと大きな違いはなさそうだ(成長投資枠が現行の一般NISAにあたる)。
しかし、別でNISAができるということは、またイチから設定しなくてはいけないのか。
「いえ、すでに現行NISAを利用しているのであれば、現行NISA口座のある金融機関に自動的に新NISA口座が開設される予定です。例えば、楽天証券で現行NISAを利用しているのであれば、楽天証券に自動的に新しいNISA口座ができるイメージなので、煩わしいことはありません。ただし、商品をまた選択し直すことになります」
では、今まで買い付けていた現行NISAの保有商品はどうなるのか。
「新規買付こそできませんが、現行NISAの非課税期間はそのまま継続になります。ですから、つみたてNISAの保有商品は最長20年間、非課税で運用し続けることができます。つまり、現行NISAは新NISAとは別枠なので、より多くのつみたてNISA銘柄を非課税で保有できます。そのため、現在やっている人のほうが有利なんです」
なるほど。では現行NISAで新規買付ができなくなる前に、目一杯積み立てておいたほうがいいのではないか。現在、筆者はつみたてNISAで「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に1万円、「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」に5000円、毎月計1万5000円を積み立てている。特定口座であと5000円積み立てているが、これはNISAとは関係ないので、残り1万8000円を追加できる。
上限ギリギリまで積立額を増やすのは痛い出費だが、現行NISAに積立できるのは残り6~7カ月と考えると、ここは無理してもいい場面なのかもしれない。
ということで、増額を決意した。では、どの銘柄を選ぶか。前回も確認した運用実績を見てみると、やはり「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が好調。
「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」で安定した積立を目指すのもいいが、やはり筆者は平均的日本人。いつまでもアメリカの傘の下でヌクヌクと生きていきたい気持ちがある。アメリカ経済と一蓮托生でいこうではないか。
そうと決まれば、さっそく設定だ。
これで「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」の5000円と合わせて、つみたてNISAの月の上限額3万3000円をMAXで積み立てることになった。
将来を考えると晴れやかな気持ちになる一方で、少なくとも今年いっぱいは飲みに行く回数を減らさなければいけない……という寒々した思いも頭にめぐるのであった。
(文=武松佑季/フリーライター)
監修:高山一惠/(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー1級
慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立し、10年間取締役を務めた後、2015年より現職へ。女性向けメディア『FP Cafe』『Mocha』の事業に注力。全国で講演活動・執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。
<主な著書>
『はじめてのお金の基本』(成美堂出版)
『はじめての資産運用』(宝島社)
『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂)
『税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)
提供元・Business Journal
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