セルビアでは銃規制は厳しく、今回のような銃乱射事件は過去、ほとんど起きていないが、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(1992年~99年)やコソボ紛争(1998年2月~99年6月)などの影響もあって自宅で銃を不法に保管している国民は少なくない。

セルビアの13歳少年の銃乱射事件をフォローしていると、ドイツの「ルイーゼ殺人事件」を思い出す。独ノルトライン=ヴェストファーレン州の人口1万8000人の町フロイデンベルクで3月11日、12歳と13歳の少女が同級生の12歳のルイーゼをナイフで殺害した事件だ。ドイツの警察やメディアは殺人が12歳と13歳の少女によって行われたことにショックを受けた。ルイーゼは友人宅から帰途に向かうはずだったが、家には戻らず、同級生の2人と自宅とは反対の離れた場所で会い、そこで殺された。

2人の少女は現在、青少年保護所で収容されている。セルビアと同様、ドイツでは14歳未満の児童は刑事責任がない。コブレンツのユルゲン・ズース警察副長官は14日の記者会見で、「40年以上、犯罪取り締まりの仕事をしてきたが、今回の事件(少女による殺人事件)には言葉を失う」と述べている(「独国民が衝撃受けた2件の犯罪」2023年3月16日参考)。

メディアは未成年者による殺人事件として大きく報道した。検察官、警察副長官、捜査官などが記者たちの質問に答えたが、犯行の動機や2人のプロフィールなどについては、「児童の保護」という理由で答えることができなかった。独メディアによると、ルイーゼが2人を何らかの理由でからかったことを、2人は根に持ち、呼びだして殺したのではないかと推測している。最近の学校では同級生間でモビング(いじめ)が原因で様々な被害や不祥事が生じている。

ドイツでは事件後、刑事責任を問う年齢を現行の14歳から下げるべきだという意見が出ている。英国では10歳、オランダは12歳、ポルトガルでは16歳といった具合で、刑事責任が問われる年齢は欧州でも違いがある。

なお、セルビアで少年の銃乱射事件の翌日(4日)、今度は21歳の男性がベオグラードの南約50~60キロにあるムラデノヴァツ市近郊で車から銃を乱射するなどをして、8人を射殺し、14人が重軽傷を負った。警察は5日、逃走中の男性を逮捕した。犯行の動機はまだ不明だ。セルビアで2日間(3日と4日の両日)で17人が銃で射殺されたことになる。セルビアにとって“悪夢の2日間”となった。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年5月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。