ボクのル・マン クラシック
水彩画を専門とする溝呂木陽さんにとって、2022年は記念碑的な1年になりました。まずは、第10回ル・マン クラシック(6月30日〜7月3日。隔年7月に開催)を現地取材。2002年から始まった「ル・マン クラシック」は、世界最高峰のクラシックカーレースといわれ、過去にル・マン24時間レースで活躍した伝説のマシンが集結し、本格レースを展開しました。

作品1/ル・マン クラシック2022 グリッド4 フェラーリ250LM/画材:フランスアルシュ水彩紙・鉛筆・透明水彩絵の具サイズ:縦31×横41㎝制作:2022年
「2022年7月、ボクは12年ぶりにフランスのル・マンのサルト・サーキットを訪ねました。事前に日本で購入した「ル・マン クラシック」のチケットは、意外にリーズナブルな値段でした。
週末4日間の通し券は、パドックやグランドスタンドのパスを含めて2万円ほど。ル・マン市内にホテルが取れたのも幸運でした。
24時間レースで有名なル・マン市は、パリから南西に約200km。ボクはパリ在住の日本人の友だちと落ち合い、2時間余りのドライブでサーキットに到着。朝の8時過ぎにゲートをくぐりました。
24時間レースでおなじみのサーキットは、フルグリッドに75台のクラシックカーが並び、グリッド1の戦前のベントレーやブガッティのクラスから、グリッド6のポルシェ935ターボやフェラーリ512BBLMまで。さらにグループCカーのクラスなどもあり、朝から夜中まで延々とレースが続きました。
サーキットのメインイベントのほかにも、クラブブースやメーカー展示など盛りだくさんでした。ボクはグリッドごとの各パドックやコース脇で撮影し、強い日差しの中で金曜から日曜までの3日間を朝6時から夜11時までサーキットで過ごしました。
作品1のフェラーリ250LMは、同じパドックに並んでいたフェラーリ250GTO64とともに注目していたクルマでした。 コース脇でカメラを構えていても、コーナーに迫ってくるフェラーリはV12エンジン全開のサウンドでわかります。同時代のデイトナ・コブラやフォードGT40とコーナーで並ぶシーンにドキドキしました」
興奮のレースを再現する作品で個展を開催。原画作品は予約制マイギャラリーで見学を

作品2/ル・マン クラシック2022 ポルシェ904カレラGTS/画材:フランスアルシュ水彩紙・鉛筆・透明水彩絵の具サイズ:縦31×横41㎝制作:2022年
帰国後の溝呂木さんは、ル・マン クラシックの連作を制作して個展を開催。さらに、自身のアトリエをギャラリーとして公開する「アトリエキャトレール」をオープンしました。
「作品1は、サーキットのコース脇から望遠レンズでとらえた写真をパソコンに大きく表示して、水彩紙にスケッチして描きました。サーキットでの興奮を思い出しながら、サイズや位置関係、背景の面積などをアレンジして仕上げています。下書きは約3時間、色塗りは5時間ほど。透明水彩絵の具は修正が難しいので、パート分けして慎重に色を塗っていきました。
作品2のポルシェ904も大好きなクルマです。ブッツィー・ポルシェ(フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ 1935〜2012年)がデザインした美しいラインのマシンが連なるパドックは、夢のモーターショーのような光景でした。白いテントを通して差し込む光が、磨かれたボディにキラキラと反射する様子を表現しました。
第10回ル・マン クラシックの新作は25枚ほど仕上げて、10月、東京原宿のペーターズ・ショップアンドギャラリーの個展でお披露目しました。その後、ボクのアトリエ&ギャラリー、「アトリエキャトレール」をオープンしました。ギャラリーは、水彩画作品の原画、これまで制作した水彩画集や模型雑誌、模型完成品のほか、アンティークおもちゃコレクションなどを展示しています。
制作中のアトリエの雰囲気を楽しみながら、作品が描き上がっていく瞬間をぜひご覧ください」
みぞろぎあきら
1967年、千葉県出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。中学生のころから1960年代のクルマを描き続けている。海外旅行先・取材先の風景を水彩画作品にまとめる仕事もライフワークのひとつ。個展開催、ミニカー作りなど幅広く活躍している。2022年、千葉県市川市に予約制私設ギャラリー「アトリエキャトレール」をオープン。アトリエHPへ。アトリエインスタグラムで作品を公開中。AAF(オート モビル・アート連盟)会員。千葉県在住
インタビュアー/山内トモコ
提供元・CAR and DRIVER
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