いや、SSGNとSSBNでは、軍事的な意味が決定的に違う、との反論があるのかもしれない。だが、「ミシガン」は、巡航ミサイル「トマホーク」を(水上艦として最大数の)154発も搭載できる。加えて、海軍特殊部隊「SEALs」の隊員を上陸させたり、遠隔操縦可能な無人機(UAV)や無人水中航行体(UUV)を発進させたりすることもできる。
はたして、どちらが「北朝鮮側の強い反発」を招くのか。私なら、間違いなく前者のミシガンを選ぶ(嫌う)。たしかに、SSBNが保有する核戦力は圧倒的である。だが、米軍が「戦略核」を使用するために、わざわざ韓国の港に立ち寄る必要など微塵もない。逆に、自身の居場所を晒すという致命的なデメリットを生む。今回の米韓「SSBN」合意が、いかなる軍事的な必要から生まれたものなのか、私には、まるで意味不明である。
いずれにせよ、今回の「拡大抑止」合意について、その後、韓国側からは、「事実上の核共有」との認識が示されている。当然のごとく、ただちに米側は「核共有ではない」と表明した。いわゆる「核共有」を巡る誤解については、以前アゴラでも書いたので、繰り返さない(拙著『ウクライナの教訓』所収)。米側が否定したとおり、今回の米韓合意は「核共有」そのものではないが、NATOの核抑止力を支える重要な柱が合意されたと評してよい。
その柱の一つが、新設された米韓両国による核協議の枠組み「NCG」である。米韓「ワシントン宣言」を引こう。
The two Presidents announced the establishment of a new Nuclear Consultative Group (NCG) to strengthen extended deterrence, discuss nuclear and strategic planning, and manage the threat to the nonproliferation regime posed by the Democratic People’s Republic of Korea (DPRK).
これはNATOの核協議制度「NPG」を念頭に置いたものに違いない。防衛研究所の新垣拓主任研究官の説明を借りよう(「NATO核共有制度について」NIDSコメンタリー第211号)
近年、DCA(核搭載可能航空機・潮注)任務以上に重要性が高まっているのは、NATO核共有制度の第3の柱であるNPGという核協議制度である。同制度では、ほぼ全加盟国間で核抑止に関する情報の共有、同盟国側の懸念の伝達、核兵器の使用方針をめぐる議論を行う機会の提供等、NATO核抑止体制にとって重要な政策形成・意思決定の場となっている。
その重要な柱が、NATOにならい、米韓の間で新設された。