宇宙には何百億、もしかしたら何兆もの銀河が存在していますが、その中でもとりわけ目立った銀河があります。
いくつかの銀河の中心には、「宇宙で最も明るい天体」として知られる「クエーサー」があり、太陽の1兆倍以上も明るく輝いているのです。
60年前に最初のクエーサーが観測されて以来、天文学者たちはなぜ特定の銀河だけが強力な活動を引き起こすクエーサーを持っているのか不思議に思ってきました。
今回、イギリスのハートフォードシャー大学(University of Hertfordshire)天文物理学研究センターに所属するジョニー・ピアース氏ら研究チームは、クエーサーを持つ銀河48個と、クエーサーを持たない銀河100個以上の画像を比較することで、クエーサー誕生の謎を解き明かしました。
彼らの分析結果によると、「2つの銀河が衝突することでクエーサーが起動する」というのです。
研究の詳細は、2023年2月13日付の科学誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』に掲載されました。
ブラックホールの周辺が光り輝く仕組み
天文学者たちは、「銀河の中心で最も明るく輝くクエーサー」が、次の過程で生じると考えています。
ほとんどの銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在しています。
ブラックホールは巨大な重力源ですが、周囲の物質(塵やガス)が飲み込まれる時、これらの物質はまっすぐに引き寄せられるわけではありません。
ちょうど排水溝に水が流れていく時のように、渦を作って中心部に飲み込まれていくのです。
このときブラックホールに流れ込む物質は凄まじい速度で移動しながら強い摩擦を生じさせ、その運動エネルギーと熱エネルギーによって荷電粒子が強力な光を放ちます。

ブラックホールの周囲に生じるこの輝く円盤を降着円盤と呼びます。
降着円盤は、吸い込む物質が多ければ多いほど、また重力が強ければ強いほど、より強力な光を放つと考えられます。
通常の超大質量ブラックホールは、観測で見えるほど明るい円盤は生じさせませんが、これが観測でも見えるほど明るく輝く場合、それをクエーサーと呼びます。
つまり、宇宙一明るい天体クエーサーの正体とは、銀河中心で大量の物質を激しく飲み込む超大質量ブラックホールなのです。
しかしここで疑問が生じます。クエーサーの活動を生じさせるほどの大量の物質は、いったいどこから流れ込んでいるのでしょうか?
銀河には大量の物質が存在していますが、ほとんどの場合、これらの物質は銀河中心から遠く離れており、ブラックホールに大量の物質を供給するには至らないのです。
どこから大量の物質を得ているのかが分かれば、「クエーサーを持つ銀河」と「クエーサーを持たない銀河」の違いの理解にも繋がるでしょう。