恐らく、2019年の選挙データから「当選ラインは約2800票」と予想した同党の選挙担当者が、緻密な采配によって組織票の割り振りを行ったものの、投票率が41.65→43.20%と微増したのが裏目に出て、次点以下4名の悔やまれる大量落選となったことが推測できる。

「応援したい政治家はいない」という無党派層も無党派なりに一票を投じて投票率を挙げておくと、組織票だのみの政治団体にダメージを与えることができるので、「やはり選挙は行った方が良い」と証明できた事件でもあった。

「寝たきり老人しかいないのに投票率が高い老人ホーム」の怪

地方選挙の時期になると、病院や介護関係者の間では「寝たきり老人しかいないのに投票率が高い老人ホーム」についての噂を聞くことが多い。

公職選挙法は、「病院、老人ホーム、障害者支援施設等に入所中の有権者が、施設内で投票する不在者投票制度」や「郵便投票制度」を設けているが、病院長や施設長などが管理者となり、外部立会人は必須ではない。そして「会話は不可能で、食事も排泄も要介護の入所者」だらけの施設において、しばしば不在者投票が行われ、異常に高い投票率を示しているのに、選挙管理委員会などで問題視された事例はない。少子高齢化で高齢者施設の入所者は増え続けているのにもかかわらず、である。

また、病院や福祉施設が特定の政党と強い結びつきを持っている事例はしばしばみられ、そういう施設において「異常に高い投票率」の噂を聞くことが多いように思う。そして、そういう組織票によって当選した議員は、「公のため」よりも「自党のため」を優先するような政治活動を行うことは想像に難くない。

認知症高齢者や障がい者でも投票の権利は守られるべきだが、投票とは少なくとも「候補者一覧表から名前を指差す」レベルの意思表示を確認すべきだろう。よって「福祉施設の不在者投票」に無縁の地方議員や政党の皆さんは、情報公開請求制度などを活用して「入所者の要介護度」に比べて「高すぎる投票率」を示す施設の存在を追及すべきである。

そして、次回の選挙では「外部の立会人」や「モニターカメラの設置」など、病院や福祉施設内での適正投票が行われるよう尽力していただきたい。