ドイツは今月15日、操業中だった3基地の原子力発電所のスイッチを切ったことから、ドイツの脱原発は一応完了したが、原発に代わって再生可能エネルギーの整備はまだ完了していない。風や水力を利用したエネルギー供給は自然の環境に左右されることもあって、エネルギーの安定供給までにはまだ時間がかかるだろう。
2基の原発を停止したバイエルン州のマルクス・ゼーダー首相は、「原発の運営、操業は連邦政府ではなく州に委ねるべきだ」と主張し、ショルツ政権を困惑させたばかりだ。輸出国ドイツの産業に十分なエネルギー供給が出来ない場合、国民経済に大きなダメージになることはいうまでもない。
ウクライナ戦争勃発後、ショルツ首相は「時代の変化」に応じて、紛争地への武器供給を認め、軍事費のアップなど、戦後から続いてきたドイツの安保政策を大変革してきた。同時に、ロシアの天然ガスに依存してきたエネルギー政策の抜本的な見直しを強いられてきた。
ドイツでは現在、原発は止まり、ロシア産天然ガスもストップした。ドイツのエネルギー政策はその後、大丈夫だろうか、という懸念はドイツ国民の過半数が抱いていると世論調査が明らかにしている。
再生可能エネルギーのインフラ整備に奮闘するハベック経済相は再生可能なエネルギーのインフラ整備、そしてLNGの輸送インフラの整備に乗り出してきている。リューゲン島のLNGターミナル計画ではポメラニア西部のルブミンにあるオフショアパイプラインを介してガスグリッドに接続される予定だが、ターミナル建設に反対のデモ集会があったばかりだ。
そのような時、LNG用パイプラインチューブのロシアからの購入の話を聞くと、環境保護政策を訴える一方、そのために大気中に多くのCO2を排出する俳優を思い出すわけだ。
ドイツのメディアは、「LNGパイプラインチューブ取引の特別な点は、売り手がロシアの国営企業ガスプロムだったということだ。一方、ウクライナ戦争によるロシアに対するドイツの制裁はまだ続いている。そのような状況を考えると、政府の決定には少々驚かされる」と報じているわけだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年4月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。