湘南の攻撃面の課題とは

この日も[3-1-4-2]の基本布陣で臨んだ湘南は、杉岡、大岩、DF舘幸希の3センターバックを起点に名古屋の守備ブロックの攻略を試みたものの、これが思い通りに運ばず。名古屋の前線からの守備によってパスワークをサイドへ誘導させられ、湘南のDF石原広教とMF中野嘉大(両ウイングバック)が厳しいプレッシャーに晒されたほか、強引な縦パスをホームチームに奪われる場面が多かった。

湘南の中央突破がままならなかった原因は、中盤の底を務めた奥野、MF平岡大陽とFWタリク(前半39分より山田)の2インサイドハーフが、名古屋の選手の真後ろに立ち続けたことだろう。基本布陣[3-4-2-1]の名古屋の1トップ、ユンカーの真後ろに奥野、永井とマテウスの背後にタリク(山田)と平岡が常に立っていたため、杉岡、大岩、舘としてはそこにパスを出しづらい状況だった。

これを改善するために必要だったのは、奥野、タリク(山田)、平岡がユンカー、永井、マテウスの斜め後ろに立ち、パスコースを作ること。3センターバックがボールを止め、顔を上げた瞬間にアンカー(中盤の底の選手)と2インサイドハーフが相手選手の斜め後ろに移動し、パスを受ける。この動きが得意なMF小野瀬康介の欠場も、湘南にとっては痛手だった。


湘南ベルマーレ 山口智監督 写真:Getty Images

「前半に関しては外ばかり」と山口監督

湘南の山口智監督は、名古屋戦終了後に自軍のパスワークについて言及。効果的な縦パスが少なかったことを改善点として挙げている。

「前半に関しては外(へのパス)ばかりで、ただそれが何のためかというところは少し薄かったのかなと思います。横パスの揺さぶりのなかでいつ縦にスイッチを入れるのかというのは、前半の終わりくらいから少し良くなって、ハーフタイムにも伝えてよりゴールに向かえたのかなと感じました。やはりボールを握って(保持して)どう崩していくのかというのは簡単ではないですし、速く攻められるところと攻められないところの状況判断というのはもちろん難しいところではある。もちろん課題もありますけど選手はよく相手を見ながらボールを動かそうとしていましたし、そのなかで一番大事なゴールへ向かうというところが大きな課題として残ったのかなと。それは闇雲に突っ込むということではなくて、その横パス一つもそうですしバックパス一つもそうです。何のためにそれをやるのかというところは相手がいることなので、もっともっと自分自身が振り返って共有できればと思っています」(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。一部加筆・補正)

相手選手の斜め後ろに立ち、パスコースを作る動きが得意なMF永木亮太が投入された名古屋戦の後半21分以降は、湘南のパスワークが安定している。小野瀬や永木頼みの遅攻からの脱却が、今の湘南には必要だ。