「お金持ち」といっても、定義はさまざまだ。一体いくら稼いで、いくら資産があればお金持ちとみなされるのか、お金持ちとはどのような人物何なのか――。

消費者アンケートや米国労働省労働統計局のデータによると、「年間所得100万ドル(約1.1億円)以上」を「お金持ち像」として米国人が最も多く、「年間所得1000万ドル(約11億円)以上」を選んだ米国人が最も少なかった。お金持ちとしての最低年間所得は「10万ドル(約1061万円)以上」がラインのようだ。

しかし9割の米国人の年間所得が10万ドルにも満たないという事実と照らし合わせると、ほとんどの人にとってお金持ちとは雲の上の存在であることが分かる。お金持ち像は年齢、性別、住んでいる地域などによって、微妙に差が出るようだ。

その一方で、3割弱が「ミリオネア(資産100万ドル以上)になれる」と信じているなど、中々興味深い結果が出ている。

1割が「年間所得1000万ドル以上でないとお金持ちではない」と回答

パーソナルファイナンス情報サイト「GOBankingRates」 が、2018年2月に米国の消費者 5021人を対象に実施した調査では、「これだけ年間所得があればお金持ちといえる」という質問で「100万ドル以上(26.22%)」「50万ドル以上(21.15%)」「20万ドル以上(14.45%)「500万ドル以上(13.66%)」「1000万ドル以上(12.82%)」「10万ドル以上(11.70%)」という結果が得られた。

ここでの回答の選択肢は年間所得が10万ドル以上が「お金持ち」の最低ラインと定義されているが、その100倍相当の金額をお金持ちの定義にしている消費者もいる。まさにお金の価値は人それぞれだ。

年齢や性別がお金持ちの基準に影響するのだろうか。「100万ドル以上」を選んだ割合は、男性(26.46%)の方が女性(25.67%)より若干多く、「10万ドル以上」では男性(10.73%)の方が女性(13.30%)よりはるかに少ない。つまり男性の方がお金持ちの基準が高いということになる。

年齢的には45~54歳のほぼ10人に1人(28.01%)が「100万ドル以上」に最も強く反応しており、55~64歳(27.72%)、35~44歳(27.27%)と続く。65歳以上は26%台、34歳以下は23%前後だ。

ニューヨークやハワイの「お金持ちのハードル」は低め?

それではこうした金銭的な価値観の差は、生活水準にも影響を受けるのだろうか。例えばウェストバージニア州では年間所得の最低ラインのは「10万ドル以上」という回答が最も多かったようだ。多かったが、この地域は米国内で住宅価値の中央値が最も低く所得の中央値も3番目に低い。

それでは生活費の高いニューヨークやハワイではお金持ちの基準も高くなるのかというと、そうでもない。「1000万ドル以上」という回答が最も多かったメイン州は、住宅価値、所得ともに中央値は平均的だ。ニューヨークは「50万ドル以上」という回答が最も多かった。

調査結果を見る限り、生活コストが高いからといって、お金持ちのハードルが上がるわけではなさそうだ。

年間100万ドル以上の所得があるのは米人口の0.25%

米国人のお金持ちの定義は分かったが、そのお金持ちは実際にどれぐらい存在するのかが気になる。米国労働省労働統計局のデータによると、年間100万ドル以上の所得があるのは米国の人口の0.25%にも満たない。

それにも関わらず、4人に1人以上が「100万ドル以上稼いでいないとお金持ちではない」と主張している。さらに「1000万以上」を選んだ10人に1人以上にとっては、999万ドルを稼いでいても「お金持ちではない」のだ。

裏を返すと、年間所得10万ドルというと経済的に裕福なイメージがあるが、88.3%からは「お金持ちではない」とみ見なされるということになる。しかし87.9%の米国人は所得10万ドル以下である。

3割弱が「ミリオネアになれる」と信じている

毎年100万ドルを稼ぐのは難しくても、資産ならば一生涯かけてでも100万ドルに増やせると考える米国人は少なくないようだ。

現実の厳しさにくじけず、「アメリカンドリーム」に憧れる米国人も少なくはない。GOBankingRates の別の調査(2017年5月22日発表 )では1008人のうち29%が「自分はいつかミリオネア(資産100万ドル以上)になれると思う」と答えている。

アメリカンドリームへの憧れは35~44歳が最も強く、36%が「なれる」と回答。次いで18~24歳(34%)、25~34歳(30%)、45~54歳(28%)という結果だ。また「なれる」と答えた割合は女性より男性が圧倒的に多く(40%)、女性(17%)の2.3倍に当たる。

しかし「アメリカンドリームは100%幻想」というわけでもないようで、米国では毎日1700人のミリオネアが生まれているそうだ。しかもこの数字は年々増加傾向にある。2017年の時点では800万人のミリオネアがおり、2020年までにはあと310万人増えると予想されている。毎年100万ドルを稼ぐのは難しくても、資産が100万ドルあれば大したものだ。

とは言うものの、ミリオネアの価値自体は減っているとの指摘もある。お金の価値の変化を考慮すると、1913年の「ミリオネア」は現在の2480万ドルに匹敵するという。

中所得層が縮小、7割以上が生活苦?

もうひとつ気になるのは、ミリオネアの増加とともに中所得層が縮小傾向にある点だろうか。ピュー研究所の調査では、2000年には全体の55%を占めていた中所得層(年間所得3.7万~11万ドル)が、2014年には51%にまで減っている。

またセントルイス連邦準備銀行は「75%の米国人が経済的に余裕のない、切り詰めた生活を余技なくされている」と指摘している。理想と現実のギャップは大きいと言ったところだろうか。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online

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