
訪英時、ロイド・ジョージ英首相と(1921年5月)出典:Wikipedia
昭和天皇は、皇太子時代とご在位中にそれぞれ英国をはじめとする欧州諸国を訪問されている。このときに当然のごとく大歓迎されたといわれているのだが、現実はそんな単純なものでなかった。
最終的には大成功だったのだが、そんなすんなりいったものではなかった。皇室外交というと、大歓迎されたという報道ばかりがされるが、そういうのは、影で行われている関係者の苦悩や必死の努力を無視するものだし、国民が安直な期待を皇室外交について持つことにもなっていると思うので、そのあたりの裏事情を、「英国王室と日本人:華麗なるロイヤルファミリーの物語」(小学館・篠塚隆氏と共著)で書いたことを一部使いながら説明しよう。
皇太子外遊は、大正天皇の皇太子時代にも話題になって、ご自身も旅行好きでおられたし、世界旅行の歌など愛唱され強く希望されていたといわれる。しかし、明治天皇は皇太子が極端な西洋かぶれになることを心配され実現しなかった。
昭和天皇は、皇太子時代の1921年3月3日から9月3日までの6ヶ月間にわたって欧州各国を訪れられた。おそらく、読者はもう少し年長になられてからのことだと誤解していると思う。