「ニトリ家電」のさまざまな課題

 ニトリの家電は売上好調な一方で、さらなる成長のためにはいくつかの課題も散見される。

 まずは、購入後の商品の配送・設置が有料オプションになる点が挙げられる。他社では、たとえばヤマダデンキのPBモデルである6kg型洗濯機は配送・設置が無料となっているが、ニトリの6kg型洗濯機は別途7150~8250円がかかり、トータル金額では思いのほか高くなってしまう。

 次に、他社では指定機種であればメーカー保証期間を過ぎたあとも延長保証が無料でついてくるが、ニトリは基本的に有料となる点だ。

 また、商品のラインナップがまだまだ足りない点もある。家電市場は買い替えニーズによって支えられているのが実情で、買い替えの理由は転居や故障、経年劣化、ライフステージの変化などさまざまだ。一般的な傾向としては、前機種よりも機能やスペックがアップしたモデルを選ぶ。とくに結婚や出産などでライフステージが変わると家電に求める機能やスペックも変わってくる。消費者のライフステージの変化に合わせて買い替え需要に対応するためには、幅広いラインナップが必要となる。

資本業務提携したエディオンとのコラボはいかに?

 このような課題解決に向けて追い風になりうるのが、エディオン(大阪府)との資本業務提携だ。ニトリホールディングスは22年4月にエディオンの株式を10%取得し、提携を開始した。

 それ以降、エディオンは22年10月から「エディオン倉敷本店」(岡山県)内にニトリとのコラボブースを開設し、同年11月からは家具、23年1月からは一人暮らしの新生活に必要なシングルベッドやマットレスのほかローボードなどを揃えた「インテリアパック」を販売している。さらにエディオンのECサイトにニトリ公式通販「ニトリネット」のバナーを貼るなど、協業を意識した取り組みを進めている。

 エディオンとの協業による販路拡大は、スケールメリットとしてコストの低減効果が期待できる。さらにエディオンの有する物流サービスやリユース・リサイクル事業も、配送コスト削減や資源の有効活用につながる可能性がある。

 現時点では、ニトリはエディオンに対して家具のみの供給を行っているが、前述のスケールメリットや相乗効果などを考えると、さほど遠くはない未来に両社の共同企画による家電が誕生してもなんら不思議ではない。

 家電市場全体を見ると、まだニトリの存在感は決して大きいわけではない。しかし、エディオンという協業パートナーを得た意味は大きい。今後、ニトリが家電で存在感を示せるかどうかは、エディオンとのパートナーシップをどこまで強固にしていくかである。両社の動きを引き続き注視していくべきだろう。

提供元・DCSオンライン

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