2つの意思決定タイプ:「最大化」と「満足化」

英ケンブリッジ大学の研究(Judgment and Decision Making, 2023)によると、主要な意思決定の方法には「最大化(Maximizing)」「満足化(Satisficing)」の2タイプがあるといいます。

最大化とは、あらゆる点を総合して最良の選択肢を見つけようとする意思決定のこと。

満足化とは、ある程度の範囲で受け入れられる選択肢が見つかった時点で決断する意思決定のことです。

調査では、どちらの傾向が強くなるかは各人の性格に深く関連することが分かっています。

「最大化」と「満足化」は性格に起因
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さらにチームは、最大化と人生の満足度の間に「負の関係」があることを発見しました。

つまり、最大化する傾向を持つ人は、満足化する傾向の人に比べて完璧主義の度合いが強く、決断後に後悔する頻度がより高くなっていたのです。

その理由の一つは、最大化傾向の強い人は常に「あの時どうしていれば良かったのか」とか「どうすればもっといい決断ができたのか」と考えてしまうからだといいます。

しかし、こうした人も「性格だから仕方ない」と諦める必要はありません。

実は性格に関わらず、誰でも些細な選択時のストレスを減らせる最適な方法があるのです。

それが「習慣化」です。

「習慣化」で無駄な思考をカットする

選択や決断は、程度の差こそあれ、どんなものでも精神的に疲れるものです。

しかし習慣化は、余計な思考力を使う必要性をなくしてくれます。

習慣化とは、言い換えれば、自分ルールを設定することです。

たとえば、曜日ごとに着る服は固定するとか、朝食は必ずパンとコーヒーにするなど、日常生活の行動を前もってルール化しておくのです。

そうすれば、些細な選択肢に悩む時間がカットされ、心を浪費せずにすみます。

ジョブズやオバマ元大統領の服装選びも、この習慣化の一例でしょう。

習慣化で「些細な決断」のストレスが消える
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ここでハノッチ氏は、アメリカの心理学者ダニエル・カーネマン氏が有名な著書『ファスト&スロー(Thinking, Fast and Slow)』で唱えた考え方を引き合いに出します。

カーネマン氏によると「人間はシステム1とシステム2という2つの異なる情報処理のメカニズムを使っている」という。

システム1とは、自動的・直感的・無意識的なもので、思考の努力をほとんど必要としない「速い思考」を指します。

具体的には「2つの物体のどちらが遠くにあるかを見分ける」とか「音の聞こえた方を感知する」などで、これらに思考の労力は必要ありません。

そして、習慣化もシステム1に属します。

対してシステム2とは、目的意識を持って熟慮を働かせる「遅い思考」のことです。

こちらは、常に自動で働いているシステム1で処理しきれない問題に遭遇したときに使われ、大きな労力を要します。

意識的な選択や決断はこちらに属します。

ハノッチ氏は、些細な意思決定をなるべくシステム1で対処できるよう習慣化できれば、重要な場面で創造力を十分に発揮できるだろうと述べています。

参考文献
Even Making Trivial Decisions Can Be Draining, But You Can Make It Easier