ストレスを抱えている人はタイピングミスが多く、打鍵数も多い

ストレスを感じている人のマウス操作は無駄が多い
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実験の結果、強いストレスを感じた「邪魔ありのグループ」の人々は、マウスを動かす速度が一定でないと分かりました。

しかも無駄なポインタ移動が多く、画面上の移動距離が長くなっていました。

加えて、不必要で不正確なクリックが多いことも分かりました。

対照的に、ストレスを感じていない「邪魔なしのグループ」はゆっくりと滑らかにマウスを動かしており、無駄のないポインタ移動によって画面上の移動距離は短くなりました。

クリック回数も少なく、正確で無駄のないクリックが行えていました。

そしてストレスを感じている人のキーボードの打ち方は、タイピングミス・打鍵数共に多いと分かりました。

ストレスを感じている人はミスが多く、その結果として打鍵数も増加
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しかも打鍵間の間隔にばらつきがあり、タイピングを頻繁に休止していました。

これは思考力の低下に伴う正確性やスピードの欠如が原因だと考えられています。

一方、ストレスを感じていない人は、タイピングミスと打鍵数が少ない傾向にありました。

打鍵間の間隔も一定であり、長めの休止で思考力を十分に働かせたあと、文章をスムーズに連続で書けていたようです。

このようにストレスとキーボード・マウスの操作の仕方には、明らかな関連性が見られました。

論文の共著者で心理学者のジャスミン・カー氏はこの関連性について、「ストレスレベルが高まると脳の情報処理能力に悪影響が及び、それが運動能力(パソコン操作を含む)を低下させたのだろう」と述べています。

ちなみに今回のテストでは、2つのグループで心拍数に大きな違いは見られませんでした。

このことから、キーボードとマウスの動作を観察することは、心拍数などでは判断できない種類のストレスを見抜くのに役立つと考えられます。

パソコン作業からストレスを検出するアプリで、ストレスへの早期対処が可能になるかも
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加えて研究チームは、これらのデータを機械学習にかけ、ユーザーのパソコン動作からストレスを検出するアプリを開発しました。

現在このアプリはスイスのオフィスで試験運用中であり、将来的には従業員が抱えるストレスを早期発見するのに役立つと考えられます。

今回の研究によると、打鍵数やタイピングミスの多さはストレスの指標でした。

自分や周囲の人でそのような変化が見られる場合、早めにストレスケアを実施することで、大きな問題に発展するのを防げるかもしれません。

参考文献
Detecting stress in the office from how people type and click

元論文
An interpretable machine learning approach to multimodal stress detection in a simulated office environment