目次
■“大人のお笑い”って、なんやねん
●人生経験豊富なトリオが“お笑いの幅”を広げる
●大人のお笑いは、過去8回にわたってライブを実施
■本題のライブやいかに!
先日、お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の平井“ファラオ”光さんからメールが届いた。その内容は、「“大人のお笑い” という新しいお笑いをやっているから、ぜひライブを観に来てほしい」というものだ。
(※インタビューやライブの写真は【関連画像】を参照)
最初は本人かどうか疑ったものだが、どうやら本当らしい。ただ、本人からの連絡だからといって、面白くなければ記事に取り上げないのも事実である。
最終的には面白かったため筆を執ることにしたが、「大人のお笑い」がどのようなものだったのか紹介しよう。
■“大人のお笑い”って、なんやねん
「大人のお笑い」と聞いて、ピンとくる人はどれほどいるだろうか。筆者も初めは“何それ?”とハテナが拭えなかったため、ライブ前にお話を伺った。
●人生経験豊富なトリオが“お笑いの幅”を広げる
“大人のお笑い”とは、間を重視した新しいお笑いのことである。大声を出したり、たくさんの情報を伝えたりして観客を笑わせるのではなく、コントでの一連のストーリーに「クスッ」と笑える要素が散りばめられているのだ。
静かなお笑いとも言えそうな“大人のお笑い”だが、発起人となったのは「馬鹿よ貴方は」の平井“ファラオ”光さんである。ここ10年で主流になったお笑いの表現の幅を広げ、音楽や美術のようにお笑いを高尚な文化の一つにしたいという想いから、大人のお笑いを始めたという。
ファラオさんが誘ったのは、「おせつときょうた」のおせつさん、ピン芸人「三福(みふく)エンターテイメント」の三福さんの2人だ。
「最近のお笑いは賞レースで勝ち抜くための攻略的なネタになり、ギュッと凝縮されたお笑いが多くなっている。それって悪いことではないんですが、すごくもったいない気がするんですよね」と話す三福さん。
もちろん、芸人活動では売れるためのネタを見せることがある。しかし、大人のお笑いを通じて自分がやりたかった芸に改めて向き合い、ライブを重ねるたびに手応えを感じているという。
「寄席で漫才をやる機会が多いんですが、年配の方ほど最近の笑いに付いていけなくなってるのを感じています」と話すおせつさん。寄席には高齢の方が多く訪れるが、近年のお笑いを見て「うるさい」「わからない」という印象を持たれることも少なくないそうだ。
そんな中で始めた大人のお笑いは、スポンサーや放送禁止ワードなどを気にする必要がない。自分たちが目指すお笑いを自由にできるため、純粋なお笑いを追求できているという。
当初、3人での活動は数ヶ月ほどで終わるだろうと見込んでいた。しかし、想像以上にお客さんからの評判が良く、気づけば2年近く大人のお笑いを続けている。所属事務所や芸風の垣根を越えて展開される大人のお笑い、果たしてどのような化学反応が起こるのだろうか。
●大人のお笑いは、過去8回にわたってライブを実施
大人のお笑いでは、これまで8回にわたってコントやトーク、楽器の生演奏などを行なってきた。ライブごとに内容が変わることはもちろん、コントにいたっては新ネタを毎回披露しているという。
「最初は僕がネタを考えていたんですが、ファラオさんやおせつさんも創作意欲が湧いたらしくて、今では一人一本ずつネタを出し合っている状態です(笑)」と話す三福さん。
2年近くライブを行なってきたが、3人の持つ空気感がぴったりと合っているため、打ち合わせやお笑いの方向性について揉めることはない。人生経験を積んできたからこそ互いに大人な対応ができ、自分たちがやりたいお笑いを実現できているのだろう。
■本題のライブやいかに!
結論から言うと、個人的にはかなり面白い内容だった。普段はコント以外も行っているらしいが、今回は新作のコントが4本立て。オープニングトークから始まり、コントとコントの間には3人のトークが挟んであるので、聞き疲れることもない。
そして、肝心のコントだが、間の取り方が印象的だった。コント中にツッコミが入ることもあるが、“説明しすぎないツッコミ”というのだろうか……、見る人に想像してもらう余白が適度に残されている。
大声を出したり、早口で話されたりすることはなく、寄席で見る落語のようなリラックスした状態で楽しめる。お客さんは30〜40代の方が多く、全員が同じタイミングで「ドカッ!」とは笑わず、人それぞれに笑うポイントが異なっている。
笑っても笑わなくてもいい。「自分の好きなタイミングで笑っていいんだ」と思える空間が何とも心地よい。ゆっくりと大人の時間を楽しめるのは、大人のお笑いならではなのかもしれない。