なかなかよくできた案だと思うが、ヨーロッパの人々、とくにフランス人は仕事を生きがいなどにせず、アフターファイブ、休暇、退職後にのんびり過ごすために働いているので、定年前倒しの方が喜ばれるのだ。
しかし、本当はもっと根本的な問題が背景にある。
フランスに限らず年金や医療保険の会計が苦境に陥っているのは、平均寿命の予期せぬ伸びが原因だ。フランスでは、1960年に70歳だったのが82歳になって、頭打ちになりそうもなく、140歳くらいまで生きる人が多くなってくるのではとも言う。また、この現実に日本のように奇抜な財政理論で赤字を正当化する人もいない。
もはや、個人も国家も老後生活の質を確保するには、長寿至上主義を見直して、平均寿命の伸びの抑制を図るとか、個人の選択を求めることも必要になってくるのではないか。
先週、マクロン大統領は安楽死の条件を大幅に緩和する方向での法案作成を命じたが、偶然とは思えないタイミングだった。