岐阜県・飛騨高山の明治時代に建てられた文化財民家「旧三輪家」を改修した1日1組の宿「谷屋(たにや)」が、4月に本格開業した。
食事付き滞在の用意を開始し、飛騨の風土の中で紡がれてきた文化や日々の営みに触れる場を提供する。古き良き日本の風景が残るまち、飛騨高山を感じる旅に出かけよう。
国指定重要文化財「日下部家住宅」に隣接
岐阜県北部飛騨地方の盆地に佇むまち高山に、旧市街に残る明治建築の伝統的建造物群保存地区がある。同地区にある、江戸時代民家の最高峰ともいわれる国指定重要文化財「日下部家住宅」は、「日下部民藝館」として、飛騨の工芸や手仕事の道具などを展示している。
「谷屋」は、同地区の特定建造物である文化財民家「旧三輪家」をリノベーションして生まれた宿泊施設で、隣接する日下部家が営む宿だ。
亭主自らがたてる一服のお茶でゲストを迎える
同宿では、日下部家当主自らがお茶をたて、ゲストを迎える。
また、ゲストの希望や興味に沿って滞在中の過ごし方の提案もする。自然や歴史、食、農、工芸、祭りなど日下部家とつながりのある地域の人々との触れ合いを通して、飛騨高山で生きてきた人々の営みを感じられる体験となるだろう。
文化財民家に滞在し飛騨の匠の技術に触れる
同宿では、左官職人として金閣寺などの文化財の修復に携わった経歴を持つ建築家、森田一弥氏が設計を手がけた空間で、日本の原風景のひとつともいわれる木造町家の造形的な美しさを実感できる。
飛騨高山を拠点に世界で活躍する左官職人 挟土秀平氏率いる「秀平組」による地元産の土を使用した土壁や、800年の歴史を持つ飛騨の手漉き和紙「山中(さんちゅう)和紙」、明治時代当時の木材をできる限り残した柱など、飛騨の匠の技術に触れることができる。
1階には茶室を含めた和室が3部屋、2階には寝室と洋室の2部屋。キッチンも備えている。
土間に面して並ぶ和室は、伝統的な飛騨高山の町家の間取り。座敷の低い天井は、明治時代当時の建築の風情とスケール感をあえて残した。丹念に塗られた土壁、光を受けて表情を変える唐紙、フォルムが美しい座椅子など、個性的な意匠の室礼を楽しめる。
「日下部民藝館」へも自由に出入りが可能で、夕刻以降は同館を貸し切り、プライベートラウンジとして利用することもできる。
飛騨高山産の檜を贅沢に使用した総檜風呂
風呂は中庭に面した窓を全開にして半露天風呂としても楽しめる総檜風呂だ。
湯船はもちろん、洗面や手洗いにいたるまで飛騨高山産の檜を贅沢に使用する。
暮らしから生まれた美しい道具たち
人々の暮らしの中で使われ、作られてきた手仕事の道具。宿では、家具はもちろん食器や小物も谷屋が考える「飛騨の豊かさ」を感じられる品々を揃える。
備えられている品々は全て購入が可能だ。その場で購入、またはつくり手や店の紹介も行う。